最近『共創』という言葉を目にする機会が増えた。

『共創』とは、文字通り企業が提供する商品やサービスなどを、生活者(顧客)と“共に創る”仕組みを指す。また、場合によっては「顧客」以外にも協力関係にある「企業」や「従業員」といったステークホルダーと共にサービスを創りあげていくこともある。

近年のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やモバイルデバイスの登場により、ステークホルダーは企業にとって一層、身近な存在となった。ここでは、生活者との関係性づくりに焦点を絞った『共創マーケティング』の事例を紹介しよう。


“共に創る”が意味するもの

2014年ごろから、企業が自社のみでなく他の企業や消費者と一緒になってマーケティング活動を展開するケースが増えてきている。日本マクドナルドホールディングス(HD) <2702> の『みんなのとんかつソース開発プロジェクト』や、キリンホールディングス(HD) <2503> の『はまっ子のためのビールづくりプロジェクト』などがそれだ。

前者は、「とんかつに合ったソースとはどのようなものなのか、生活者の考えを反映させよう」という試みだし、後者はビールの開発に横浜(神奈川県)の若者の意見を取り入れるという意図を持っている。ほかにも、伊藤ハム <2284> の『ハム係長の商品開発部』ほか、事例には事欠かない。

ただ、ここで注意しなければならないのは、消費者は決して商品開発のプロではないということだ。どのような商品を世に問うべきかを決めるのは、あくまでも企業の商品開発部門なのであって、消費者が提供するのはその契機にとどまっている。企業と消費者がそれぞれの得意分野をわきまえた上で、初めて“共に創る”作業が生まれるのだ。


商品開発を伴わない『共創』もある

2014年4月に発表された第6回日本マーケティング大賞に、ネスレ日本の『ネスカフェ アンバサダーによるオフィス市場の開拓」が選ばれた。当該プロジェクトは、生活者とともに既存の商品を職場に普及させるというもので、商品開発を伴わない『共創』が開花した好例だと言える。

ネスレ日本は『ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ』や『ネスカフェ ドルチェグスト』といったコーヒーマシンを職場に無償提供し、『ネスカフェ』の社内普及をアンバサダーと呼ばれる生活者に行ってもらう。

アンバサダーは無料でコーヒーマシンを利用できるほか、使用するカートリッジも市場最安値級の価格で定期購入できる。その一方で、アンバサダーは、任意ながら定期的なアンケートへの回答などサービス向上のための協力を求められる、という仕組みだ。