橋下徹大阪市長が掲げる「大阪都構想」が、是非を問う住民投票で反対多数となり、実現されないこととなった。開票後の記者会見で橋下市長は、任期満了の今年12月までは市長を続け、その後は政界から引退する意向を表明した。

そもそも「大阪都構想」とはどのようなものだったのだろうか。大阪府や大阪市の方はよくご存知だろうが、あまり詳しくない方も多いのではないだろうか。「大阪都構想」の内容を振り返ってみたい。


大阪都構想とは?

大阪都構想は、戦時中に実施された東京府と東京市を廃止して「東京都」としたものを参考に、大阪市を廃止し特別区を設置するというもの。

東京の場合、戦時中に東京府と東京市が統合し、東京都となった現状においても、うまく機能しているが、どのようにして「東京都構想」は進められたのだろうか。

東京都構想は、東京都に広域的な自治体として必要な機能を集中し、効率的な行政運営を行うというもの。各特別区は、市民に身近な業務に限定している。この方法がうまくいくためには、東京都から特別区に、身近な行政を行うための権限を委譲する必要がある。したがって東京都は、財源調整や、上下水道、公共交通といった広域性が求められる業務のみに限定されるということでもある。

大阪でもこのように、大阪府が持つ権限を各自治体に大幅に委譲し、大阪府は調整機能や広域的行政サービスの提供に、業務を限定すればいいのだろう。


大阪都構想が突きつけた「二重行政」の問題

大阪都の実現により、大阪府と大阪市とで似たような事業を重複して行ういわゆる「二重行政」を解消し、行政サービスの効率化を目指した。二重行政とは都道府県とその傘下にある市町村が、類似の業務を似たような目的のために行うことだ。

二重のコストという観点からいえば、図書館、美術館、博物館やホールといった文化施設を、それぞれの自治体が建設する場合にしばしば問題として取り上げられる「二重のハード」に関するもの。もうひとつは、中小企業に対して、大阪府と大阪市が別々に行う信用保証のような「二重のソフト」に関するもの。

ほかの自治体では県と市とで一本化されていることが多いが、大阪では府と市とで二重に実施されてきた。このようないわゆる「二重行政」を解消することによって、市民に、より効率的な行政サービスを提供することができるのではないかといった橋下市長の問題提起であった。

二重行政の問題は従来から指摘されてきた。結局、住民投票により否決されたが、反対に投じた市民が二重行政の非効率性をいいと思っているわけではないだろう。解消するのが望ましいのは確かだ。否決されたのであれば、現状の体制のまま、問題を解消する方法を模索しなければならない。


自治体のあり方に一石を投じる

二重行政の解消はメリットばかり強調されるが、二重行政解消により、削減したコストをどのように使えば雇用創出や税収増加につながるのか、その施策も考えていく必要がある。

大阪都構想ではコスト削減効果を「4,000億円だ」「いや1億円しかない」など、幅がありすぎる議論となっていた。大阪府や大阪市においても財政悪化は避けられず、コスト削減は必須課題だ。しかしそれ以上に税収を増やすような施策も必要となってくる。

大阪に限らず、ほかの地方都市でも同様に、少子化による経済力の低下、財政問題、二重行政といった課題を抱えているところは多い。広域行政機能を強化した大阪都構想は、東京の一極集中を緩和し、地方創生や新しい自治体のあり方を考えていく上で、一石を投じたものだった。

反対派にとっても突きつけられた課題は大きい。都道府県と政令指定都市が互いに連携し、ムダなく協力を図っていく新しい方法を考える時期に来ているのだろう。(ZUU online 編集部)

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