1-3月期の実質GDPは前期比+0.6%(年率+2.4%)と堅調な結果であったが、在庫投資の前期比寄与度が+0.5pptと大きかったことが注目された。

GDPを算出する時、消費・設備投資・輸出などはその水準を足し、輸入はその水準が引かれる。一方、在庫投資は、水準ではなく変化が足されることになる。

1-3月期の実質GDP(季節調整済)の527.3兆円の内訳は以下のとおりになる。足される家計消費308.9兆円、住宅投資13.1兆円、設備投資71.3兆円、政府消費102.9兆円、公共投資22.7兆円、輸出95.3兆円、そして引かれる輸入が83.1兆円となっている。その他、統計的な誤差が-2.8兆円ある。

在庫投資の変化は、民間で-1.0兆円、公的で0.02兆円ある。在庫投資の実質GDP前期比寄与度がプラスということは、在庫の増加幅が大きくなったか、在庫の減少幅が小さくなったか、という2通りある。

在庫投資の実質GDP前期比寄与度がプラスで、在庫が積みあがったという単純な解釈がなされることがあるが、それは前者のケースである。1-3月期は、在庫投資の変化はマイナスにとどまっているため、在庫の減少幅が小さくなったことになり、在庫が積みあがったわけではない。

企業が持つ経済成長見通しが弱い、または在庫管理システムが効率化することにより、在庫投資の変化はマイナスとなりやすい。実際にリーマンショック後は、ほとんどの期間でマイナスとなっている。

しかし、持続的な経済成長、そして物価・コストも持続的に上昇することを企業が予測し始めれば、在庫管理システムの更なる効率化を考慮しても、在庫投資の変化はプラスになるはずである(リーマンショック以前の景気拡大期はプラスが多い)。

消費税率引き上げによる需要の停滞と不確実性の高まりにより、在庫投資は抑制されてきたが、内需拡大の見通しが強くなっていくであろう今後は、その抑制が緩やかになってくるはずである。

1-3月期の在庫投資の実質GDP前期比寄与度は大きなプラスとなったが、まだ在庫投資の変化がマイナスであることを考慮すれば、先行きの在庫削減が成長率見通しを大幅に引き下げる要因とはならないと考える。

実質総賃金の強い拡大による内需の拡大、輸出の堅調な回復、交易条件の大幅な改善による企業活動の更なる活性化、日銀の追加金融緩和を背景に、2015年度の実質GDP成長率は+2.3%と、マーケットコンセンサス(+1.8%程度)を大きく上回る予想を維持する。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

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