KADOKAWA・DWANGO <9468> 傘下のKADOKAWAが、4月からAmazonとの直取引を始めたことが話題を呼んだ。「書籍流通の構造改革につながるのではないか」と言うのがその理由だ。問題の真相を知るには、「取次制度」を理解しておく必要がある。
書籍流通に君臨してきた「取次」
書籍流通は、製造業者に当たる「出版社」と、卸売業者の「取次」、販売業者の「書店」の3者によって成り立ってきた。その中で取次の力が圧倒的に強いのがこの業界の特徴だ。
2大取次会社の日販とトーハンは、売上高5,000億円以上の出版界きっての大企業。ところが講談社や小学館、集英社やKADOKAWAなどの出版社も、また紀伊國屋書店や丸善、TSUTAYAチェーンなどの書店も、いずれも売上高2,000億円を遠く望むような規模に過ぎないのだ。
取次がこうした強大な力を培ってきたのは、過去の書店の売上データをもとに「新刊を各書店に何冊配本するのか」を決定してきたという経緯による。あまり販売実績のない書店に多く配本してしまえば、当然のことながらよく売れる書店の店頭在庫が不足し、機会損失をきたしてしまう。新刊売上を資金繰りに組み込んできた出版社にとってみれば、死命を握られてきたも同然だ。
「返品」自由の委託販売制度
さらに日本の書籍流通を特色付けているのが、出版社が書店に本の販売を委託するという「委託販売制度」だ。出版社から仕入れた本を、書店は原則として自由に返品できるというこの制度。通常の小売業界であれば、仕入商品は買取り、売れ残りは在庫となる。
ところが書籍流通では、一部の買取り契約を除けば基本的には「返品自由」となっている。書店は売れると思う本を取次から仕入れるのだが、思ったように売れなかった場合には取次に返品が許されている。無論こうした仕組みがあるからこそ、書店は売れ残りを気にせずに仕入れを行ってきたのだ。