(写真=PIXTA)
今週の特徴:ドル安で円安?!
今週は、米FOMCで先行きのFF金利予測が若干下方修正され、ややハト派的な内容となったことから、発表後のドル安進行が特徴的だった。
ドル/円も一時122.43円へ下落したが、ドルの下落率が対円よりも対その他通貨での方が大きかったことから、ユーロ/円や豪ドル/円は小幅上昇し円安となった。
この間、英CPIのプラス転や週平均賃金の予想比大幅上振れなどを受けて、ポンドが大きく上昇した一方、NZドルはNZ1QGDPが予想を大きく下回り追加利下げ期待が更に高まったことから、大幅下落したのも特徴的だった。
■ドル/円:今週レンジ122.48~124.45円(想定よりややレンジが狭く)
(前週時点の予想:122.0~125.0円)
ドル/円は、16日までは123円台半ばの狭いレンジ内の横ばいに終始したが、17日には、米FOMCを控えてタカ派的な結果を事前に織り込む動きからかドルが全般的に上昇し、一時124.45円へ上昇した。
もっとも、FOMCでは2016年、2017年末のGDP成長率やインフレ率の予測は上方修正されたものの、FF金利予測は下方修正され、年内に利上げを開始する可能性は更に高まったが、先行きの利上げペースがより緩やかになることが示され、全体としてタカ派度が弱まったと捉えられ、ドルが全般的に反落したことから、18日にかけて122.48円へ大幅反落した。
なお、16日には黒田総裁が国会で答弁を行った際、円高をもたらした自身の6月10日の円安牽制発言についても発言し(実質実効ベースで更なる円安は考えにくい、等と述べた10日の発言に関し、名目ベースでの円安化を望まないとは言っていない、などと述べた)、一時的に0.5円程度円安化する局面もあったが、10日の発言を修正・撤回するものではなく、すぐに反落していた。
■ユーロ:今週レンジ1.1189~1.1436ドル、138.08-140.66円(概ね想定通り)
(前週時点の予想:1.115~1.145ドル、137.0~140.5円)
ユーロ/ドルは、ギリシャ支援問題に関して6月末の期限が近づいているにも拘らず進展がみられず、ギリシャだけでなくスペインやイタリアなどの高債務国の債券・株式市場にも売り圧力が波及したが、ユーロは週前半は概ね1.12ドル台で上下に振れつつも底堅い展開が続いた。
そして17日には米FOMCを受けたドル安により、1.13ドル台半ばへ上昇、18日にはEUが現在の支援パッケージの年末までの延長を検討しているとの独紙報道を受けて1.1436ドルへ続伸した。
ユーロ/円も、概ねユーロ/ドルの上昇を反映して、138円台前半からFOMC後の18日にかけて140.66円へ上昇した。
■豪ドル:今週レンジ0.7646~0.7849ドル、94.95~96.31円(ほぼ想定通り)
(前週時点の予想:0.765~0.785ドル、94.5~97.0円)
豪ドル/米ドルも、週前半は概ね0.77ドル台で方向感なく上下する展開だったが、米FOMCを控えた米ドル買いの動きを受けて0.7646ドルの安値を付けた。その後FOMC結果を受けた米ドル反落により、0.77ドル台半ばへ反発、18日には0.7849ドルへ続伸して高値をつけた。
この間、鉄鉱石価格は反落基調、豪2年債利回りもFOMC後に米国につれて低下するなど、豪ドル安要因が多かったものの、米ドルの動向の影響力の方が大きかった。
豪ドル/円も豪ドル/米ドルと同様の動きとなり、17日のFOMC前に95円丁度手前まで豪ドルが軟化、翌日には米ドル/円の下落の影響をより強く受けて94.95円の安値をつけた。もっとも、その後は豪ドル/米ドルの上昇の影響をより強く受けて96.31円の高値をつけた。
その他通貨では、英ポンドが大きく上昇した一方、NZドルの下落が特徴的だった。
ポンドは15日は米経済指標(NY連銀製造業景況指数、鉱工業生産)の予想比下振れを受けた米ドル安、16日には英5月CPIのプラス転および17日の英4月週平均賃金の予想比大幅上振れや18日の英5月小売売上高の予想比上振れなど、一連のポンド高米ドル安材料を受けて、1.55ドル丁度近辺から1.5930ドルへ上昇し、5月半ばの高値を上回り年初来高値を更新した。
対円でも、191円台から18日に195.84円へ上昇し、2008年9月のリーマンショック前の水準を回復した。
他方で、NZドルは先週11日にRBNZが十分に織り込まれていなかった利下げを行い、今後の追加利下げを示唆したことから大きく下落していたが、17日のFOMC前の米ドル高により続落、その後タカ派度が後退したFOMCを受けて一旦反発したものの、18日発表のNZ1QGDPが予想を大きく下回る低成長となり、追加利下げ期待が更に高まったことから、対米ドルで0.70ドル丁度近辺から0.6881ドルと2010年7月以来の安値へ、対円では86円台前半から84.72円と年初来安値(84.07円)の手前へ大幅下落したのも特徴的だった。
(今週のレンジ実績は月曜から金曜昼頃まで、数値はBloombergより)
来週の見通し:デフォルトとデフレの瀬戸際
来週は、米経済指標(中でも耐久財受注、コアPCEデフレータ)、本邦コアCPI、ユーロ圏景況感指数(ユーロ圏PMI、ドイツIFO)およびギリシャ支援問題の協議を行うユーロ圏首脳会合などが予定されている。
ドル/円は、出遅れている米耐久財受注や低下したコアPCEデフレータの明確な回復がみられると小反発するかもしれないが、上値は黒田総裁発言が抑えていることから、122-124円程度の狭いレンジに留まりそうだ。
ユーロは6月末に期限が到来するギリシャ支援問題の進展が注目され、最終的には何らかの合意が行われる可能性は引き続き高いものの、期限が近づくにつれ資本規制やデフォルトリスクも意識されやすく、下落圧力がかかる局面が出てきそうだ。
■米ドル/円:予想レンジ122.0~124.0円
ドル/円は、冬場の減速から出遅れている米耐久財受注や、前月4月に前年比+1.2%へ低下したコアPCEデフレータの明確な回復がみられると小反発するかもしれないが、上値は黒田総裁発言が抑えていることから、122-124円程度の狭いレンジに留まりそうだ。
本邦コアCPIは前年比ゼロとデフレの瀬戸際への回帰が予想されているが、黒田総裁は追加緩和の姿勢を示すどころか円安牽制を行っており、当面は追加緩和期待の変化が円相場を動かすことにはなりそうにない。
■ユーロ/ドル予想レンジ:1.125~1.150ドルユーロ/円予想レンジ:138.0~142.0円
ユーロは、6月末に期限が到来するギリシャ支援問題の進展が注目され、何らかの合意が行われる可能性は残るものの、デフォルトや資本規制導入リスクも意識され易く、どちらかというとイベントリスク回避のためユーロへのエクスポージャーを削減する動きが広まりユーロにした押し圧力がかかりそうだ。
なお、ユーロ圏PMIやドイツIfo景況感指数などのユーロ圏の景況感指数が発表予定で、いずれも小幅悪化が予想されており、これ自体はユーロ上値抑制要因だが、既に今週発表され先行指標的な意味合いを持つZEW期待指数は大幅悪化しており、多少の悪化ではサプライズはなくユーロへの影響は限定的となりそうだ。
■豪ドル/米ドル:予想レンジ0.765~0.790ドル豪ドル/円:予想レンジ94.5~97.0円
豪ドルは来週、豪州関連の重要材料が殆どないことから、米ドルの動向に左右されそうだ。但し、豪2年債利回りや鉄鉱石価格が軟調に推移している中で、米経済指標が悪化すればもみ合い、改善すれば軟調となりそうだ。
山本雅文(やまもと・まさふみ)
マネックス証券
シニア・ストラテジスト
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