大学のサバイバルレースが加速している。少子化を背景に定員割れどころか、経営破綻する大学が出てくる一方で、設立間もない大学が入試難関校に躍り出た例もある。大学間の格差は広がるばかりだ。
文=ジャーナリスト/梨元勇俊
消滅危機の大学続々
文科省の調査によれば、日本の大学は2000年に合計649校(国立99校、公立72校、私立478校〈私立の割合73・7%〉)だった。だが10年には大学合計778校(国立86校、公立95校、私立597校〈同76・7%〉)と約2割も増加。
中でも私立大学は119校も増えている。その多くは系列経営の短期大学や専門学校を4年制大学に改変したものだ。現在はさらに増えて大学の総数は800校を超えている。
日本人の大学進学者は2人に1人。大学の数が増える一方、少子化で若者の絶対数は減っている。選り好みしなければ希望者全員が入学できる「全入時代」になって久しい。
それなのに定員枠に対する学生数を満たせない大学がある。大学経営の7割は入学金や授業料で、残りは国からの補助金に頼っている。だから定員枠を満たせないと学校法人の経営は困難に直面する。こういう大学は学科試験ではなく面接や論文で選抜したり、推薦入試を実施したりと学生確保に必死だが、私立大学の約4割は定員割れだ。
静岡大学と東洋大学は法科大学院の16年度以降の学生募集を停止した。兵庫県尼崎市の聖トマス大学は昨春の学生数がゼロになり、今年3月末で廃校になった。今年に入ってから神奈川の大学院法務研究科(法科大学院)や名城大学の大学・学校づくり研究科も16年度以降の学生募集停止を決めている。
まず短期大学が系列経営の4年制大学に改組されて消え、次いで看護などの専門大学や法科大学院が消滅の危機に瀕しているという図式だ。
次に淘汰の波に洗われそうなのは女子大だ。戦前は男性にしか大学が開放されていなかったため女性が高等教育を受ける機会は女子専門学校が中心だった。戦後は男女平等の方針のもとで多くの女子専門学校が女子大学として認可され、1960年代以降、女性の高等教育への進学熱の高まりもあって女子大は隆盛を極めた。しかし80年代半ばあたりから女性の共学志向が強まって女子大への入学志願者は全体として毎年減少傾向にある。
いくつかの女子大は共学化に踏み切ったが、戦前から続く伝統の「女子教育」の看板にこだわる学校も少なくない。「女子」を大学の個性のひとつとして打ち出して生き残りを図るが、岐路に立っているのは間違いない。