(写真=PIXTA)
アマゾンVS楽天ではなくアマゾンVSヨドバシの声も
ヨドバシカメラのネットショップ「ヨドバシ・ドット・コム」の評価がネット上でうなぎのぼりだ。購入金額にかかわらず全品配送料が無料であり、都内なら注文から6時間以内、地方主要都市でも当日中に商品が届く配送のスピーディさが好評である。
同社は、現在、国内全人口カバー率で70%のエリアで当日配達、98%のエリアで翌日配達が可能だとしている。この速さは各大型都市に巨艦店舗を擁し、物流センターを整備しているヨドバシカメラだからこそできる芸当であり、現時点(2015年7月)では業界最大手のアマゾンも太刀打ちできていない。
かつ「ヨドバシ・ドット・コム」の品揃えが家電、食料品、アウトドア、ゴルフ用品、キッチン用品、ペット用品、文房具、書籍(電子電書籍含)など急速に幅広くなっていることから、ネット上では、アマゾンを超えるのは楽天ではなくヨドバシという声も増えつつある。
ネット通販市場は急拡大しているが、あいつぐ参入企業の増加により競争激化している。そんななか、「ヨドバシ・ドット・コム」は2015年3月期の売上が790億円と前年度比19.6%UPの急成長ぶりだ。
ヨドバシカメラ本体の売上も6515億円で業界4位ながら経常利益は511億円と家電業界トップであり、経常利益率は7.8%と高い(※6月24日付日経MJの推定値)。逆風のふきまくる流通小売業界で、躍進するヨドバシカメラの強みはいったいどこにあるのだろうか。
実店舗の強みを生かし、ショールーミングを還流させる仕組み。
スマホやネットが普及した現在、消費者は小売店でほしい商品を見つけても安価なネット通販で購入する。そのため多くの小売店は実質ショールームと化し、アマゾンや楽天などのネット通販大手に売上を奪われてきた。ヨドバシカメラが成功したのは、このショールーミングの流れに沿うような販売の仕組みを構築したことにある。
ヨドバシカメラの店舗では、消費者が全商品の値札バーコードをスマホのアプリで読み取れば「ヨドバシ・ドット・コム」の該当ページで、在庫や競合他社の価格、商品レビューまで参照できる。実店舗への来店者を積極的に自社ネットショップに誘導しているのだ。
消費者はネットで最低価格を確認した後、レジで購入するのも「ヨドバシ・ドット・コム」経由で注文するのも自由に選択でき、買い物しやすい。逆に「ヨドバシ・ドット・コム」で注文して、受取を実店舗にすることも可能にし、ネットショップの消費者を実店舗に来店させる仕組みも整えている。
徹底した「駅前戦略」により実店舗はすべて駅前の一等地にある利便性が高く、東京・秋葉原店と大阪・梅田店にいたっては24時間店舗受け取りサービスも実施している。ネットショップの消費者を来店させることで実店舗の売上増にもつながりやすくなる。実店舗を持つ強みをとことん活かした戦略をとっているといえる。
昨年秋、米国ではアマゾンが実店舗を展開するニュースがでて話題になった。ネットだけでは成長できないという理由のようだ。国内では有機野菜のネット販売企業オイシックスがやはり実店舗を展開している。ショールーミングの流れも大手小売業が本気で参戦してくれば「ネットショップは価格や評判を調べるだけ」という解釈に変化する可能性があり、ネット単独店舗には危機感があるのだろう。ヨドバシカメラは現状では、各社の半歩先を走っている。(ZUU online 編集部)