(写真=PIXTA)
内閣府は平成26年版高齢社会白書の中で、高齢者の人口を予測している。その中では、総人口が減少する中でも高齢者が増加し、2035年には高齢化率が33.4%で3人に1人が高齢者となる。2042年以降は高齢者人口が減少に転じても高齢化率の上昇は続き、2060年には39.9%となり、国民の約2.5人に1人は高齢者となる。これだけを見ると今後、日本の介護サービスは成長産業に思われる。しかし実際は介護報酬が実勢価格に見合ってない上に人材確保も困難なため、介護事業者は厳しい運営を求められている。そんな中、不動産会社や住宅メーカーが次々に介護サービスに進出している。不動産会社や住宅メーカーにとって介護サービスにとって、介護サービスはどのような意味合いがあるのだろうか。その真意に迫ってみたい。
介護施設で賃貸事業が狙い
不動産会社にとっての介護サービスの魅力とは、老健施設は不動産賃貸業として安定的に賃料が稼げる点にある。ディベロッパーが賃貸事業を成功させるためには、土地の仕入れが重要なポイントとなる。良い土地は売りに出ることは少なく、市場に出ても高くなってしまうため、利回りが低くなり賃貸事業が成り立たない。そこでなるべく安くて良い土地を探すことがディベロッパーとしての生命線なのである。
賃貸事業における土地仕入
土地の仕入れと言っても、やたらな土地を仕入れても意味がない。賃貸事業が成立する都市部は、通常、都市計画法上の市街化区域の中にあることが多い。この市街化区域は12種類の用途地域が定められており、各用途地域の中では建てられる建物が決まっている。例えば、用途地域の中で商業地域はオフィスを建築することはできるが、第一種低層住居専用地域はオフィスを建築できない。この第一種低層住居専用地域は閑静な住宅地域に指定されていることが多く、用途地域の中でも最も建築制限が厳しい。そのため土地の用途の多様性が低いため、第一種低層住居専用地域の土地代は商業地域の土地代と比較すると安い。また昔からの地主も住んで居るケースが多く、たまに第一種低層住居専用地域の中で大きな土地が売りに出るというのも特徴である。
第一種低層住居専用地域でも可能な賃貸事業
この規制の厳しい第一種低層住居専用地域の中でも、老人ホームや身体障碍者福祉ホームは建築が可能だ。老人ホームや身体障碍者福祉ホームは工業専用地域以外の11種類の用途地域で建築できる珍しい建物であるが、仮に商業地域で老人ホームを建築しようとしても土地代が高すぎて利回りが著しく低くなってしまう。そこで土地代の安い第一種低層住居専用地域で建築すれば、利回りも確保され賃貸事業として成立するのである。
不動産会社参入のきっかけはヘルスケアREIT
このように以前から第一種低層住居専用地域における老人ホームの賃貸事業は可能であった。しかしながら、ディベロッパーが次々に参入したきっかけとなったのは、昨年ヘルスケアREITである日本ヘルスケア投資法人 <3308>が上場したことだ。このため、ディベロッパーにとっては開発した老健施設をヘルスケアREITに売却できるため、開発利益を確保できる。売却することで借入金を早期に回収できるようになり、開発に弾みがついたのだ。
住宅メーカーのきっかけは相続税強化
住宅メーカーにとっても、老人ホームの建設は相続対策になる。こちらも第一種低層住居専用地域の大地主に対して、以前から提案メニューにあった。住宅メーカーが介護サービスに参入してきた理由としては、2015年より相続税法が強化されたためだ。自社で介護事業を運営できるようになれば、賃貸アパートの他にも地主に対し管理も含めた老人ホームの提案ができることになる。
土地活用のチャンスも増えた
以上、不動産会社にとってはヘルスケアREITの登場、住宅メーカーにとっては相続税法の強化が介護ビジネス参入への契機となった。このおかげで規制の厳しかった住宅系の用途地域において、土地の有効活用も進展していくと思われる。土地活用に困っていた第一種や第二種の低層住居専用地域の土地オーナーにとっては、チャンスが増えてきたと言えるだろう。(提供: Leeways online )
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