増え続ける社会保障費、特に医療費を抑えるために普及拡大が課題となっている後発医薬品(ジェネリック)。政府が6月末にまとめた「経済財政運営と改革の基本方針2015(骨太の方針)」では、後発医薬品の使用割合の目標達成時期を、従前の「2020年に80%以上」から「2018~2020年度までのなるべく早い時期に80%以上」と前倒し、「2017年半ばに70%以上」という中間目標まで設定した。
さらに政府は、後発医薬品の供給を拡大するため、新薬メーカーにも製造を要請する方向で検討しているという。大手メーカーの協力が得られない場合、輸入を拡大する方針だ。ただでさえ海外からの医薬品輸入が急増して競争が激化している中で、後発医薬品を製造することになれば利益率の下落は必至。製薬企業の頭痛の種は尽きることがなさそうだ。
先発医薬品が高い理由
先発医薬品の薬価が高い理由は、研究開発に時間と費用がかかることだ。一般に先発医薬品を世に送り出すまでには、10年~20年程度の期間と数百億円~数千億円の費用を要する。その間、発明した化合物(薬の元となる物質)に対して、製薬企業はただちに特許申請を行うが、特許によって保護される期間(医薬品は通常25年)の大半は研究開発期間と重なり、独占販売できる期間は限られている。その期間内で、かかったコストを回収し、さらに利益を上げて次の投資に備える必要があるため、高額な薬価設定がなされるのだ。
一方、後発医薬品とは物質特許が切れた医薬品について、もとの製薬メーカーとは違う製薬企業が製造・販売する医薬品である。オリジナルの医薬品(先発医薬品)と同等の有効性を得ることができるとされる。先発医薬品に比し、研究開発のためのコストがかからない分、安価で販売できる。
先進国の後発医薬品の普及状況
政府は、後発医薬品が医療費抑制に貢献できる医薬品であるとして利用を推進しているが、普及は進んでいない。厚生労働省のデータによると、日本の普及率は40%(2011年)。他の先進国は、米国91%、ドイツ82%、英国73%、フランス62%と普及率は高い。
日本で普及が遅れている理由について、厚労省はウェブサイトで「医療関係者の間で、後発医薬品の品質や情報提供、安定供給に対する不安が払拭されていない」と指摘している。
ただ、それ以上に理由として考えられるのは、高額な先発医薬品を処方したほうが、薬価差益が大きかった分、医療機関設側の利益が得やすかったことだ。