中国が通貨人民元の切り下げに動いたことで、世界のマーケットを元安ショックが直撃した。日本株にとっては、リスクオフに伴う全体相場の下押し圧力はもとより、これまで元気の良かったインバウンド(訪日外国人観光客)銘柄を手掛けづらい状況となった点で大きな影響が出た。

しかし、市場関係者の間ではインバウンド需要に対する中期的な強気スタンスが根強いようだ。

中国人民銀行は13日まで3日連続で人民元の基準値(中間値)を切り下げ、1ドル=6.4010元とした。10日の水準(1ドル=6.1162元)と比べると切り下げ幅は4.6%に達する。13日の日経平均株価は終値で前日比202円高の2万595円と3日ぶりに反発したものの、一時はマイナス圏に転じる場面があった。

人民元安は中国人による日本への「爆買い」ツアーの勢いをそぐ恐れがあるとの見方を背景に、いわゆるインバウンド関連株の一角の上昇に急ブレーキがかかった。

この3日間で、10日終値比の値下がり率はコメ兵 <2780> が一時約15%、ラオックス <8202> が同約14%、資生堂 <4911> 、コーセー <4922> が同約13%、松屋 <8237> が同約11%に達する。その多くは13日にいったん切り返したものの、目先は神経質な値動きが続く可能性がある。


依然、円安・人民元高

確かに、人民元安は訪日中国人の消費にとって逆風だ。このため、爆買いが株価の付加価値となっていた銘柄のバリュエーションにはある程度の削減余地が出てくるだろう。

ただ、円に対する人民元の下落幅はまだ対ドルの場合ほど大きくなく、13日午後3時時点で1元=19.40円と6月上旬の高値(同20.25円)からの変動率は4%にとどまる。

さらに、安倍政権誕生以前の同12円台と比べると、レートはまだ6割強の円安・元高水準にある。免税対象分野の拡大といった政府の観光振興策の効果も続いているとみられることなどから、中国人旅行者の日本への流入規模はそう簡単に減らないという見方が有力だ。


JAL、ANA推奨の声も

野村証券では、人民元が対円で10%の通貨安になった場合でも、訪日中国人の減少は3.3%にすぎないと試算。買い物予算が減ったとしても影響を受けにくいとみる日本航空 <9201> 、ANAホールディングス <9202> を推奨している。

小売など消費関連株に関しては、高額商品の売れ行きを反映する百貨店各社の売上速報が好・不況をみる上で参考となる。8月分は9月初旬に発表される。そこへ向けて調整が続くようであれば、出尽くし・反転狙いの先回り買いも有効だ。(8月14日付株式新聞掲載記事)

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