高齢化などの影響による空家率の増加などの問題を抱える住宅不動産市場。こうした課題に対応するために、国土交通省も動き出している。中古住宅流通を促進することを目的にした、民間事業者等と金融機関などが、市場の活性化や拡大に向けた基本的方向や取組課題を共有する動きは その一つ だ。

この国土交通省が音頭をとって推進した議論のとりまとめが、このほど公開されている。その動きを受けて、「業態転換支援事業」や「住関連情報サービス事業」を行うハイアス・アンド・カンパニーのシンクタンク「ハイアス総研」が、中古住宅市場についての構造的な変化を指摘しており、今回と 次回 の2回にわたって、同社の中古住宅市場に迫りつつある転換について迫る。以下が、ハイアス総研が指摘する中古住宅市場のトレンドだ。


中古住宅市場活性化ラウンドテーブルとは?

中古住宅市場活性化ラウンドテーブルという委員会をご存知でしょうか。2013年9月、中古住宅・リフォーム市場の活性化に向けた基本的方向や取組課題の共有を目的として、不動産事業者や金融機関などの中古住宅市場、リフォーム市場の関係者が集まり、「中古住宅市場活性化ラウンドテーブル」という委員会が国土交通省によって設置され、2013、2014年度の2年にわたってさまざまな議論が行われました。そして2015年3月、報告書として議論の内容が公表されました。

今回この議論を紹介するのは「終の住処を手に入れる」「よりよい生活空間を手に入れる」といった「消費」行為としての住宅取得が、実は生活者のライフプランにとって大きな影響をもたらす「投資」行為であり、そうした観点を持って臨むべき市場に向かうべきであるという議論であったと考えられるからです。


住宅という不動産の「資産価値」の現状

国民経済計算(内閣府)を基に、国土交通省が作成した資料によれば、日本国内において1969年から2013年までに行われた住宅ストック形成投資の累計は893兆円あまりとなっています。これに対して、住宅ストックの現在評価額は、約350兆円(2013年時点)と、約500兆円が“積み上がっていない”という結果になっています。この背景には、住宅という建物の資産価値評価が築年数の経過にともない急激に減価するといった手法の問題などが指摘されています。

同報告書では、別の視点からも現状の問題と資産としての住宅が持つ可能性について触れています。国民経済計算年報(内閣府)および消費実態調査(総務省)を基に、(資産から負債を除いた)家計純資産、約2687兆円のうち、現金・預金等が約940兆円であるのに対し、住宅・宅地資産の総額は約980兆円と家計における金融資産の相当部分を占める規模であり、さらに、その内訳がほとんど土地(約676兆円)であると指摘しています(2013年時点)。