今、一部の国内ネット証券では、ネットと対面の融合が進んでいる。

日本では、個人投資家の資産運用に関する知識のなさがしばしば問題視されるが、個人投資家が気軽にアドバイスを受けられる場はまだまだ少なく、また金融機関のセカンドオピニオンとして相談できる機関も数少ない。

また、金融機関に勤めていない独立系FPなどに自分に適した「ポートフォリオ」を組んでもらったとしても、自分で金融機関を探して、売買のタイミングなどを図らなければならず、意外と面倒だったりもする。結局のところ、適切な資産運用のアドバイス体制が日本では整備段階だと言える。

そこで、いま注目されているのが「IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)」という存在だ。もともとは米国で普及した制度だが、「Independent Financial Adviser」のイニシャルを取ってIFAと呼ばれることが多い。日本ではまだ浸透していないため広くは知られていないが、近年少しずつ注目を集めつつある。

投資家の視点に立ってアドバイスする長期運用の案内人「IFA」

日本でのIFAというのは、内閣総理大臣の登録を受けて証券会社や銀行、生命保険会社といった金融機関、いわゆる「金融商品取引業者」と業務提携を結び、株や債券、投資信託などの売買の仲介を行う業者のことだ。簡単に言うと、金融機関から独立した資産運用アドバイザーであり、金融商品の仲介も行う業者と言える。個人・法人の両方がある。

IFAは、単にアドバイスするだけでなく、提携している金融機関の有価証券などの金融商品を選択して、顧客のために売買を仲介してくれるところが特徴的である。しかも、提携する金融機関は複数で、金融機関からの独立性を重視する。

IFA先進国の米国では、個人投資家は金融機関の看板よりも、IFAに信頼感を持っており、たとえば提携している特定の金融機関の商品ばかりを推奨するようなIFAは信頼されない。中立の立場で顧客のポートフォリオを組み、投資するミューチュアルファンドも独自に研究して、最も高いパフォーマンスを約束してくれそうな銘柄への投資を勧める。

米国には、長年に渡って高い運用益を出してきた伝統的なファンドが多い。たとえば、米国民をリッチにしたと言われる「フィディリティ・マゼラン・ファンド」などは、こうしたIFAが個人投資家に長期運用商品として推奨したために、高い運用益を上げられたと言われている。

米国で特定の金融機関に属しない独立系の投資アドバイザー=IFAに、高い信頼性が置かれているのも、こうした事情があるからだ。

会計士、税理士、保険代理店なども参入提携金融機関も拡大へ

日本でIFAの存在が注目されるようになったのは、2007年の金融商品取引法改正によって、証券仲介業が「金融商品仲介業」に変更されてからだ。金融商品の販売チャネルを多様化し、もっと顧客サイドに立った金融商品の販売体制づくりを目指したものだが、その中心的な存在としてIFA制度がスタートした。

会計士や税理士、独立系FP、保険代理店などがIFAに参加し、個人投資家サイドに立った運用アドバイスを提供する道筋ができた。実際に、オンライン証券などが中心になって、IFA独立支援サービスを展開するところも増えつつある。

一般的に、対面証券で行おうとすると同じ組織内に2つの営業部隊ができ競合するため、顧客の取り合いになるが、ネット証券だと自前の営業マンがいないため、そういったことが起こらないというメリットもある。

たとえば、SBI証券では「IFAビジネスサポート」として、独立系のIFAと業務提携したうえで、様々な形で支援している。具体的には、SBI証券の経験豊かなサポート要員が主要都市に配置され、運用アドバイスに不可欠なサポートをしてくれる。IFA専用のコールセンターや専用のWEBサービスなども用意し、SBI証券が扱っている金融商品などの迅速な情報提供を実施している。

また、ネット証券最大手ならではと言える豊富な商品ラインナップ、IPO・POの引き受けが多く強みと言えるだろう。SBI証券としては、IFAを直接的、間接的にサポートすることで、個人投資家がよりレベルの高いアドバイスを受け、その結果としてポートフォリオに組み込む金融商品の提供先になることが狙いだ。

これまで日本の投資家は、証券会社や銀行などが進める金融商品に、何の疑問も持たずに投資してきた。しかし、本当に長期的なスタンスで資産運用を考えれば「毎月分配型ファンド」と呼ばれるタコ足配当のファンドが全体の7割を占めるような結果にはならないはずだ。そういう意味でも、IFAの存在がもっと身近なものになる必要がある。