(写真=ZUU online編集部)
東急電鉄から熊本、長野、静岡など地方都市の私鉄に譲渡された5000系車両「青ガエル」。車両の老朽化や代替部品の不足により、次々と姿を消していっている。現在残っているのは熊本電鉄の菊池線を走る1車両だけだが、この最後の1両も今年度限りで引退する。「青ガエル」の歴史と地方電鉄の苦悩について紹介したい。
渋谷ハチ公前にもある5000系車両「青ガエル」
「青ガエル」の正面は、湘南スタイルの2枚窓・下ぶくれのような愛嬌ある顔つき・車両全体が緑一色であることから「青ガエル」の愛称で親しまれている。5000系車両は1954(昭和29)年?59(昭和34)年に製造され、86年まで東急電鉄の車両として実際に走行していた。航空機の技術を応用した超計量ボディーとアメリカからの技術導入による電気機器を備えた新性能車。
東急がステンレス車体への切り替えによって、地方都市の私鉄に譲渡された。渋谷のハチ公前に飾ってある電車もこの「青ガエル」、一度上田交通に譲渡された車両が里帰りした。外装、内装はそのままの状態で「青ガエル観光案内所」渋谷の観光案内所として、来訪者を楽しませている。
青ガエルを見に全国から鉄道ファンが熊本へ
熊本電鉄は81年と85年に東急から各2両、4両の車両を譲り受けた。今残っているのは1985年に譲り受けた1両のみ。現在は北熊本?上熊本間にて運行、9時?15時半の間は自転車も乗せられる。
2009年には塗装の塗り替え、社内の座席シートの張り替え等がなされ大掛かりな改装が行われた。つり革には味がある「渋谷109・東急百貨店・東急食堂」などの文字が残されている。運賃表も今や懐かしいロール式のアナログ形式であることも魅力の1つだ。
全国でも唯一の生き残りの最後の車両を見ようと、熊本県外から鉄道ファンが訪れ観光にも一役買っている。しかし、暑さも厳しい熊本であるにも関わらず、冷房がなかったことは利用者に厳しかったに違いない。冷房化の必要性や部品の調達ができなかったことも廃車が進んだ原因だ。