熟成肉
(写真=PIXTA)

東京・六本木にウルフギャング・ステーキハウスがアメリカから進出して話題になるなど、「熟成肉」がブームになって久しい。あちこちで熟成肉を出すレストランが出ているが、すべての店でしっかりとした管理態勢がとれているのか疑問の声が聞かれる。行政による規制の必要性を指摘する意見も出始めている。

熟成肉の魅力と歴史

熟成とは何かといえば、要は「寝かせる」ということだ。料理には「一晩ねかせるとおいしくなる」ものがあるが、牛肉も寝かせることで美味しくできる。肉の中の酵素が凝縮されたタンパク質をうまみ成分のアミノ酸に変えることが美味しさの秘訣らしく、このアミノ酸のうまみこそが熟成肉の魅力なのだ。冷蔵庫がなかった時代、欧州で食品を涼しい洞窟などに吊るして保存したことが熟成肉の始まりだと言われている。

熟成の仕方にはドライエイジングとウエットエイジングの2種類ある。エイジングとは歳をとらせるという意味がある。

ドライエイジングは、温度1〜4度、湿度60〜80%の空間で20日〜60日寝かせて肉が含む余計な水分(自由水)を飛ばして乾燥させる。乾燥が進むと特定の微生物が酵素をつくり、凝縮されたタンパク質をアミノ酸に変える。要は干物と同じだ。常に肉のまわりの空気が動くように扇風機を使用することもある。表面が黒ずみ綿毛状のカビが生えるため、見た目はまるで腐っているようだ。

これに対してウエットエイジングは乾燥させない。肉を布で巻いた状態や真空状態で、温度0〜2度で30日程度寝かせる。北米やオセアニアから輸入されるチルドビーフは、輸送から流通にかかる時間が3〜5週間、この間にウエットエイジングされる。家庭用の冷蔵庫でも試せるのがこの製法だ。

数十日も寝かせるため肉が腐くのではないかと考えるかもしれないが、ただ寝かせただけの「腐敗」では「熟成」と比べて有害な微生物が付着するため、臭いも悪くなる。管理下で熟成された肉は“腐って”はいないので、臭くない。