(写真=PIXTA)

ROE(株主資本利益率)、EBIT(支払金利前税引前利益)、FCF(フリーキャッシュフロー)……。投資をするとき、こうしたちまたにあふれた指標を参考に優良企業を探す人も多いことだろう。今回は経理実務者の観点から、そうした指標でははかれない優良企業の見分け方を「人材情報・会計基準・国際税務」の3点から見ていくことにしよう。なお、ここでいう優良企業とは、長期的に成長していく企業と定義する。


「ヒト」の情報を見抜くには

企業の経営資源は、ヒト・モノ・カネの3つと言われる。モノ(製品・設備投資など)やカネ(キャッシュ等)については会計情報に記載されるものの、ヒトについてはほとんど載っていない。事業はヒトが運営するにも関わらず、である。給与や教育費の額は「販売費及び一般管理費」総額の10%を超えない限り開示しなくてもよく、開示された情報も過去の結果にすぎない。

ヒトに関する定量情報としては、平均年収と平均勤続年数が有価証券報告書に記載されている。しかし平均年収は管理職を含むかどうかなどの計算方法が各社で異なるため、単純に比較できないのが現状だ。

平均勤続年数が短い場合に考えられることは、離職率が高い、新卒を積極的に採用している、中途採用を活発にしているなどである。逆に平均勤続年数が長い場合は、離職率が低い、新卒をあまり採っていない、中途入社を行っていない―—といったことが考えられる。

労働者に優しい会社か、新陳代謝が行われているのか、企業の歴史や事業、平均年収とのバランスをみて判断することになる。昨年との比較で平均年収が下がり、平均勤続年数が短くなった場合、若年者を増やしていると推測できる。衰退期産業に属する会社が平均年収も平均勤続年数も年々高くなっている場合“新しい芽”に投資できておらず、新陳代謝が進んでいないと考えられる。