エイベックス・グループ・ホールディングス <7860> がJASRACに委託していた楽曲約10万曲の管理を、著作権管理会社のイーライセンスに移す手続きを開始した。エイベックスHDがイーライセンスとジャパン・ライツ・クリアランスの筆頭株主となり、両社の事業統合に向けた協議を開始する。両社はJASRACに次ぐ規模の著作権管理団体。JASRACが圧倒的なシェアを誇るこの分野で取ったエイベックスの行動が、業界にどういった影響を及ぼすのか注目が集まっている。
JASRACの独占から新法施行で参入したのがイーライセンスとJRC
(写真=HPより)
JASRACの正式名称は、一般社団法人日本音楽著作権協会で、1939(昭和14)年に設立された。国内の作詞者、作曲者、音楽出版者などの権利者から演奏、放送、録音、ネット配信などさまざまな形で利用される音楽に係る著作権の管理委託を受けて、楽曲の使用料を受け取り、分配する業務を国内でほぼ一手に担ってきた。
以前は、音楽分野の著作権管理事業者はJASRACしかなかったが、2001年に著作権等管理事業法が施行され、新規参入が可能となり、新たに参入したのがイーライセンスやJRCだ。放送分野での楽曲の著作権管理業務に参入しているのは、JASRAC、イーライセンス(2006年参入)、JRC(2015年4月参入)の3社のみだ。
イーライセンス「JASRACの方式は独禁法違反」
JASRACは放送局との間で、曲が流れた回数や時間を問わず、各局の放送事業収入の1.5%を使用料として徴収し、徴収金額の10%(実施料率。JASRACが 文化庁へ届け出ている上限料率は15%) を管理手数料として差し引き、残りを権利者に分配する「包括契約」を締結している。
この方式に対して、1曲ごとに徴収する方式で新規参入したイーライセンスが、独占禁止法違反(私的独占)に該当するのではないかと指摘していた。
公正取引委員会は2009年、JASRACの方式が独占禁止法違反にあたるとして排除措置命令を出したが、JASRACの不服申し立てを受け、最終的に独禁法に違反しないとする審決を出した。審決とは、行政機関の行う公権的判断の一種。公取委は独禁法に違反する行為があるとき、事業者に対して審決により違反行為を排除するために必要な措置を命じることができる。
最高裁「JASRACの方式は“参入妨害”」と判断
これに対しイーライセンスは、公取委の審決取り消しを求めて最高裁に訴え、2015年4月28日に最終判決が出された。最高裁はこの方式について、「ほぼすべての放送事業者が長期間にわたり、JASRAC以外の事業者が管理する楽曲を利用しづらくなっている」と判断、“参入妨害“とした一審、東京高裁判決を支持した上で、「市場での支配力を維持するための人為的なものだ」と指摘している。
その後、放送分野における著作権管理方法については、JASRAC、イーライセンス、JRC、NHK、日本民間放送連盟の間で協議が行われ、2015年9月17日、各管理事業者の管理作品の利用割合を正しく算出することで合意に至っている。