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(写真=PIXTA)

HSBCがまとめた「海外駐在員にとって住みやすい国ランキング」で、総合的に最も高い評価を得たのはシンガポールだった。2位以下はニュージーランド、スウェーデンなどと続き、台湾が8位にランクイン。日本は24位、中国が27位などとなっている。

この調査は 39ヵ国・地域の駐在員を対象に行われた。

評価対象となっている細かなポイントは全部で27あり、ランキングは総合だけでなく、ポイントごとでも順位が分かる仕組みになっている。

少し分かりづらいので詳しく説明しよう。全27の評価ポイントは、大きく3つの分野「経済」「生活スタイル」「家庭環境」に分けられる。この3分野もさらに細かく3項目ずつ分けられている。

たとえば「経済」分野は「個人金融」「地域経済」「キャリア」の3項目に分けられ、さらに各項目とも3つずつのポイントで評価されている。たとえば「地域経済」の項目は<経済的信用><アントレプレナーシップ><政治>の3ポイントで評価されているというわけだ。このため合計27ポイント(3分野×3項目×3ポイント)となるのだが、ランキングは総合以外にも、「分野」ごと「項目」ごと、そして「ポイント」ごとでも見ることができる。

1865年に香港で創設された香港上海銀行を母体に、1991年に設立されたHSBCホールディングスは、商業銀行、投資銀行、リテール銀行、グローバル・プライベートバンキングの4つの事業部門に分かれている。総資産額は中国工商銀行、中国建設銀行、中国農業銀行に次ぐ世界4位。イギリスに本社を起き、全世界に1万店舗以上を展開する世界最大級の金融グループだ。

ここではシンガポールと日本、そして世界経済の動向はもとより、領土問題や人権問題など、今後の世界の在り方に大きな影響を及ぼすものと考えられる中国についても、比較の対象とする。主に「経済」分野の3項目である「個人金融」「地域経済」「キャリア」に分けて各国を比較してみよう。

まずは総合ランキング、次に「経済」分野のランキングをおさらいする。

ランキング「総合」編トップ10 スイスが意外な10位

1位 シンガポール
2位 ニュージーランド
3位 スウェーデン
4位 バーレーン
5位 ドイツ
6位 カナダ
7位 オーストラリア
8位 台湾
9位 アラブ首長国連邦
10位 スイス

24位 日本
27位 中国

ランキング「経済」編トップ10ではスイスが1位

1位 スイス
2位 シンガポール
3位 ドイツ
4位 アラブ首長国連邦
5位 カタール
6位 スウェーデン
7位 サウジアラビア
8位 バーレーン
9位 オマーン
10位 香港

12位 中国
27位 日本

「個人金融」の項目 「貯蓄」では中国がシンガポールを上回る

「個人金融」の項目では、「可処分所得」、「賃金の上昇」、「貯蓄」の3ポイントがランク付けの対象となっている。これら3ポイントを総合した結果、つまり「個人金融」項目のランキングは、シンガポールの7位に対し、日本は17位、中国は10位だった。

内訳を見ると、まず「可処分所得」については、シンガポールが9位、日本は16位、中国はこれらを大きく上回る4位にランクされている。一方「賃金の上昇」については、シンガポールの4位に対し、日本は19位、中国も16位と振るわない。

また「貯蓄」では、シンガポールの13位に対して日本は21位、中国は6位だった。「中国の駐在員はお金がたまる」ということなのだろうが、可処分所得が高いことも勘案すると、「すぐに買いたいものが見当たらないので、取りあえず貯金しておこう」と考える駐在員が多いのかと、うがった想像をしてみたくなる。

「地域経済」の項目 「起業の容易性」で日本は39カ国中36位

次の項目「地域経済」に関しては、「信頼感」、「起業の容易性」、「行政面」の3ポイントがランク付けの対象となっている。これらを総合した結果では、シンガポールが39カ国のトップの位置にいるのに対し、日本は26位、中国は18位だった。

内訳を見ると、まず「信頼感」については、シンガポールの2位に対して日本は28位と、相当な差をつけられている。また中国は11位にランクされている。一方「起業の容易性」については、シンガポールの3位に対して日本は36位と、諸環境をきちんと見直すべきレベルにあると言えそうだ。なお中国のランクは17位。

また「行政面」では、シンガポールの3位に対して日本は15位、中国は17位だった。どのようなサポートが起業を促すのかについて、シンガポールにおける実態を真剣に検討してみる必要がありそうだ。

「キャリア」の項目 日本の課題は「ワークライフバランス」の充実

最後の項目「キャリア」でランク付けの対象となった3ポイントは、「キャリアの向上」、「ワークライフバランス」、「仕事の安全性」だ。これらを総合した結果では、シンガポールが13位だったのに対し、日本は34位と極めて低いランク。中国が10位であることを見ても、より柔軟な対応が求められていることを憶測させる。

内訳を見ると、まず「キャリアの向上」については、シンガポールの4位に対して日本は29位。中国が2位にランクされているのを見ても、諸制度に改善の余地がありそうだ。一方「ワークライフバランス」については、シンガポールが33位、日本も39位と、大いに改善の余地がありそうに思える。ここでは中国のランクは10位だった。

また「仕事の安全性」では、シンガポールの14位に対して日本は5位と、この点では優れているとの評価を得ている。中国のランクは12位。

これらのランキングはそれなりに興味深いが、大切なのは評価されるに値する状況を生み出すための具体的な対応策だ。細かく確認すると、具体策につながりうる発見が多数あるだろう。(ZUU online 編集部)