レクチャーを受けるアクサ生命のペレティ社長(左、写真=アクサ生命保険)

先輩社員や上司が“メンター”(指導者、助言者)として新入社員の教育や育成を行う「メンタリング」は珍しくないが、最近では逆に若手が上司や先輩に教える「リバースメンタリング」を採用する企業が増えてきている。


「逆メンター制度」広がるきっかけは米GEウェルチ元CEO

そもそもメンタリングは、1980年代にアメリカで生まれ、発達してきた制度である。そして、リバースメンタリングが広まるきっかけをつくった人物がジャック・ウェルチ、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の元CEOだ。

今から十数年前、彼はGEにおいて「若手社員の指導によってベテラン社員たちにインターネットを習得させる」という逆メンター制度を取り入れた。ジャック・ウェルチ自身も若手から指導を受け、ネットサーフィンができるようになったと言われている。


日本GEやアクサ生命保険、P&Gジャパンの取り組み

国内でも日本GEなどの外資系企業が先導役となって、リバースメンタリングを導入する動きが見られている。実際に逆メンター制度を導入した企業ではどのような取組みを行っているのだろうか。

アクサ生命保険では、CEOを始めとした役員、管理職たちが教えられる側(メンティー)となり、メンター役の若手社員からメンタリングを受けるプログラムを導入。ソーシャルメディアやテクノロジー、最新トレンドについてなど、若者ならではの知識や感性を必要とする分野について指導やセッションが行われ、知識や理解を深めるというプログラムとなっている。

最近でも、社長のジャック・ドゥ・ペレティ氏がLinkdInの使い方とセルフィー(自撮り)のレクチャーを受けたばかりだ(写真)。この取り組みによって世代間のギャップを埋めるという意図もあるという。

リバースメンタリングのメンターのパターンを分類すると、ITなどの専門分野の指導を行うケースと、子育てなどの文化的な話題についてアドバイスするケースの2パターンに分けられるようだ。

日本GEやアクサ生命がITを中心とした研修プログラムを組んでリバースメンタリングを活用する一方、女性ならではの視点や経験を生かした逆メンター制度で効果をあげているのが、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&Gジャパン)だ。

女性が活躍する企業として知られるP&Gでは、多くの女性社員がメンターとして活動している。若手の女性社員が上司の相談相手となり、女性の立場からアドバイスしている。

たとえば、仕事と家事の両立、育児の悩みについてのセッションを行うことで、上司は直属の部下たちの悩みについて理解することができる。生活環境の違いや世代間のギャップをリバースメンタリングによって埋めながら、指導される側の上司たちはマネジメントに生かすことができる。