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(写真=PIXTA)

住宅ローンを組んでマイホームを手に入れる際には、定年までに完済できるようなプランを組むのが理想的。しかしながら、借入総額や借入期間、月々の返済額などの兼ね合いから、現実にはなかなかそれが難しいケースも出てくる。

そういった場合、退職金で残債を完済すべきなのか。それとも今まで通りの返済を続けながら退職金を少しでも有利なかたちで運用すべきなのか。判断に迷っている人もおられるのではなかろうか。

定年後の生活状況で選択肢は3つに分かれる

住宅ローンは少しでも早く完済したほうが有利といえるが、退職金以外の貯蓄や定年後の収入などの生活状況に応じて、ベストチョイスは異なってくる。

具体的には、①残債を一括返済する、②一部を繰り上げ返済する、③今まで通りの返済を続けながら退職金で何らかの運用を行う−−−の3つを挙げることができよう。

①を選べるのは、退職金以外にもそれなりの貯蓄がある人や、定年後も再就職するなどである程度の収入を確保できる人に限られてくるだろう。他の貯蓄や定年後の収入が乏しいという人は、生活に困窮してしまったら元も子もないので、①と②は論外となる。

ただし、団体信用生命保険に加入していなかったり、完済前に保険契約が終了したりする人は、資金的に厳しい面があっても①や②を検討するのをお勧めしたい。なぜなら、ローンの契約者に万が一のことがあった場合、相続人に残債の返済義務が生じるからだ。

一部を繰り上げ返済する際は定年後の出費を考慮すること

生活が困窮するほど苦しくなることはないものの、退職金を全額返済に回すのは不安だという人、他にもまとまった資金の用途があるという人は、②が有力な候補に挙がってくる。リフォームや介護施設への入居など、定年後にもまとまった出費はいくつか考えられるので、慎重に計画を立てたい。

繰り上げ返済とは、無理のない範囲でまとまったお金を返済することで、その後の住宅ローンの残高や月々の返済額を減らしたり、返済期間を短縮したりするもの。返済に充てられる金額や自分の希望を告げて、借入先に相談してみると良いだろう。

また、第3者的な立場であるFP(ファイナンシャルプランナー)に相談してみるのも一考だ。FPについては当コラム「 お金の健康を守ってくれる「家計のホームドクター」とは 」でも詳しく紹介しているので、ぜひ参考にして欲しい。

③で運用を検討する際の注意点

最後に③のケースであるが、退職金の運用する際は決して過度にリスクをとらないように注意したい。たとえば、投資信託は多様な消費者ニーズに合わせて品揃えも豊富であるが、そのなかには仕組みが複雑なために、初心者にはリスクを正確に把握するのが難しいものもある。自分でリスクを理解できないような商品には手を出さないこと。あるいは金融機関の担当者に相談し、理解を深めることも大切だろう。

そもそも、住宅ローン金利を超えるリターンが得られる「安全確実」な金融商品は目下のところ存在しない。リスクをとって株式や投資信託、外国債券などで運用すればその可能性を追求できるものの、けっして成果が約束されたものではない点に留意する必要がある。

たとえば、一部の新興国の債券などには2ケタの利回りを得られるものもあるが、発行国がデフォルト(債務不履行)に陥れば元利の支払いが果たされない恐れが出てくる。2ケタの利回りは魅力的ではあるが、あくまで外貨建てで約束された数字であり、為替の変動に伴って目減りしてしまうリスクも抱えている。もちろん、2ケタの利回りを得る可能性も十分あるものの、同時に上記のようなリスクがあることを忘れてはならない。

自分自身でリスクを把握できないものへの投資は極力避ける、或いはリスクを理解できるように勉強するなどの努力も必要だろう。