今年も早いもので12月。7日現在で日経平均株価は、1万9600円台を付け、昨年の大納会(1万7450円77銭)を上回る可能性が高くなった。1年を通してみれば堅調だったといえるが、個別にみれば値下がりした銘柄も当然ある。ここでは、年初の大発会からみた騰落率でワースト10の銘柄を題材にとり、「今悪いので来年は買いかもしれない銘柄」探しをしていく。

騰落率ワースト10銘柄は下記の通りだ(順に企業名、証券コード、上場市場、下落率)。

(1)雑貨屋ブルドッグ <3331> ジャスダック ▲76.5%
(2)ブロッコリー <2706> ジャスダック ▲75.8%
(3)日本ギア工業 <6356> 東証2部 ▲70.7%
(4)カイオム・バイオサイエンス <4583> マザーズ ▲70.6%
(5)CRI・ミドルウェア <3698> マザーズ ▲68.1%
(6)アクセルマーク <3624> マザーズ ▲64.8%
(7)ドリコム <3793> マザーズ ▲63.03%
(8)アサカ理研 <5724> ジャスダック ▲62.97%
(9)ミマキエンジニアリング <6638> 東証1部 ▲62.2%
(10)GMOリサーチ <3695> マザーズ ▲61.99%
(※ETFを除く。▲はマイナス、下落率はすべて12月3日現在)

ワースト10銘柄のチャートを眺めていると、いくつかのパターンがあることが分かる。

その① 昨年終盤にIPOした企業

まず、2014年終盤に株式を上場し、その時に高値を付けた後にじり安となっているケースがある。具体的には、CRI・ミドルウェア(2014年11月上場)とGMOリサーチ(14年10月)の2銘柄だ。IPO銘柄は投資家が上場前に抽選で入手し、上場直後に売って利益を得る投資家が多い。このため上場後は売り圧力に押されやすい。

ただ、成長につながる材料がある銘柄には上場した後も押し目買いが入るはず。ここで登場する2銘柄は、投資家にとってIPO以外に買う理由がなかったとみるべきだろう。両銘柄とも現在、公募価格(CRI・ミドルウェア2400円、GMOリサーチ2100円)を大きく割り込んでいる。

当期予想でみた株価収益率(PER)はCRI・ミドルウェアが31倍程度、GMOリサーチは23倍程度。大企業中心の日経平均採用銘柄の平均PERが15倍台であることを考えれば、特にGMOリサーチは来年中に値幅調整の売りが一巡し、底打ちすると期待しても良さそうだ。成長余力のある中国やアジアでの事業の成否が投資の可否を見極めるポイントとなりそうだ。

一方、CRI・ミドルウェアはGMOリサーチに比べると、まだ相対的に割高感がある。同社はCSK総合研究所を前身とし、2001年にミドルウェア部門が独立して発足。現状はゲーム開発や遊技機向けのミドルウェアのソフト使用許諾料への依存が大きい。医療・ヘルスケア向けなど新規事業を伸ばし、収益性を高めることが株価反転の条件となるだろう。

その② 昨年終盤までに急騰、今年はじり安

次のパターンは、2014年終盤までに株価が急騰し、今年は反動でじり安となったケースだ。具体的にはブロッコリー、日本ギア工業、アクセルマーク、アサカ理研、ミマキエンジニアリングの5銘柄が該当する。ブロッコリーとアクセルマークがゲーム関連、その他3社は製造業だ。

これらの銘柄は、ほぼ1年をかけて大きく下落した。しかし、だから買いやすくなったとは言い切れない。昨年までの株価上昇により、ひとつの相場が終わったとすれば、リバウンドも限定されるためだ。

ブロッコリーとアクセルマークの2社の共通するのは、スマートフォン向けゲームの苦戦だ。ブロッコリーはソニー・コンピュータエンタテインメントのゲーム機PSP向けのソフト「うたの☆プリンスさまっ♪」シリーズや関連グッズの物販を手掛け、2014年まではゲーム関連株として人気が高かった。

しかし、普及が進んだスマートフォン向けのゲームではヒット作に恵まれていない。アクセルマークも、従来型のソーシャルゲームからスマホ向けゲームへの転換を図る途上にある。両社の株価が浮上するためには、スマートフォン向けに新たなヒット作を出すことに尽きる。

一方、残りの製造業3銘柄は、個別材料に反応し急伸した後の反動が続いている状態にある。日本ギア工業はバルブの駆動装置が主力。株主が経営陣の入れ替えを求め、経営権争いが表面化した中で株価が急上昇した。アサカ理研はレアアースやレアメタルのリサイクルに関する研究成果をきっかけに急上昇した。ミマキエンジニアリングは、業績予想の上方修正をきっかけに買い進まれた。

中小型株が個別材料で急伸した後、株価が落ち着くと、上値では含み損を抱え、株を持ち続けている投資家が戻り売りをしようと待ち構えている可能性がある。業績改善で株価が底打ちとなる可能性はあるが、際立った目新しい好材料でも出ない限り、上値の余地は限られるだろう。

その③ 14年中からじり安

最後のパターンは2014年までに株価の下落が始まり、今もなお低迷局面から抜け出せないケースだ。雑貨屋ブルドッグ、カイオム・バイオサイエンス、ドリコムの3銘柄が該当する。

ドリコムも、スマートフォン向けゲームが低迷している。経営課題は、「その2」のブロッコリーやアクセルマークとよく似ている。経営陣がどういう打開策を出すかに注目したい。

カイオム・バイオサイエンスは創薬ベンチャーとして新興市場で一世を風靡した銘柄。上場以来、一貫して営業赤字が続いており、この銘柄を長く保有し、しびれを切らしている投資家は少なくなさそうだ。製薬大手に技術を提供する「導出」が順調に進めば業績改善につながる可能性はあるが、研究所の新設を中止するなど、先がみえない状態にある。

なお、最後に残った下落率1位の雑貨屋ブルドッグは、女性向けのファッション雑貨店を運営してきたが、過去には不適正会計や就労管理上の問題が発覚。債務超過状態となり、店舗網の大半を閉鎖した。徳島県を地盤とするアクサスと共同持ち株会社方式で経営統合するが、その持ち株会社では雑貨屋ブルドッグの既存株主の議決権は大幅に縮小する。もはや通常の投資対象とはなりにくい。

騰落率ワースト10の銘柄をみると、直近のIPO銘柄を除き、ヒットの不在、財務の悪化などに悩む企業が多い。あえて注目すべき企業を挙げるとすれば、経営内容そのものに不安な点が少ない「その1」のIPO銘柄が無難だろう。

逆に、あまり期待を持たずに安値を拾って将来の値上がりを待つのであれば、ゲームやバイオに夢を託すのも悪くはなく、選択肢になるだろう。いずれにせよ、投資は自己責任であることをお忘れなく。(ZUU online 編集部)

※本ページで紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。投資に関するご決定はご自身のご判断で行うようお願いいたします。


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