(写真=PIXTA)

海外現地法人を3社以上もつ製造業の企業を対象とする 海外直接投資についてのアンケート調査結果を発表され、海外投資の有望国1位はインドとなり、中国はインドネシアと同率の2位となった。

国際協力銀行(JBIC)が調査を行い、 1016社へのアンケート調査に607社が回答している(回答率59.7%。実施期間2015年7月から9月)。

回答した企業の業種は「自動車」「電機・電子」「化学」が約半数(48.6 % )を占め、「一般機械」(9.4 % )「精密機械」(5.3%)「食料品」(4.9 % )「繊維」(4.6%)などが続いている。

JBICの調査結果によると、海外展開の強化・拡大姿勢を持つ企業は8割を超える。海外投資の有望国1位はインドだ(得票率40.4%)。2位のインドネシアと中国は拮抗している。インドは前回の同調査に続いての1位となり、今後の成長性に多くの日本企業が注目する傾向が明らかになっている。

それでは海外投資先有望国のランキング上位10カ国を見てみよう。

ランキング(上位10カ国) 5位までアジア勢が独占

1位 インド (得票率40.4%)
2位 インドネシア (38.8%)
2位 中国 (38.8%)
4位 タイ (30.7%)
5位 ベトナム (27.5%)
6位 メキシコ (23.6%)
7位 アメリカ (16.6%)
8位 フィリピン (11.5%)
9位 ブラジル (11.1%)
10位 ミャンマー (7.9%)

インド 「現地マーケットの成長性」が際立つ

インドの有望理由は「現地マーケットの今後の成長性」(回答比率88.9%)が1位だ。過去5年の調査結果で常に8割以上の回答比率を得ており、巨大市場への期待の高さが表れている。

有望理由の2位は「安価な労働力」(同32.7%)。3位に「現地マーケットの現状規模」が入り、この回答比率が年々、高まっている。海外事業の展開先として、市場が育ってきていると推測される。

一方で、課題は「インフラが未整備」が1位(同49.4 % )だ。2位は「法制の運用が不透明」(同38.9 % )。3位は「他社との激しい競争」(同31.5 % )。他には「徴税システムが複雑」(4位)「税制の運用が不透明」(6位)が入る。海外投資先としての課題は少なくはないようだ。

インド高速鉄道計画に日本の新幹線技術を輸出

おりしも、ランキング1位となったインド西部で進んでいる高速鉄道計画に対して、日本の新幹線技術を輸出することで両政府が合意。

1兆8000億円と見積もられている事業費のうち、最大で1兆4600億円の円借款を供与することで一致した。JBICの調査結果に見られるように、今後も巨大な成長国への海外投資が進みそうだ。

インドネシア 「現地マーケットの現状規模」「安価な労働力」が伸長

インドネシアの有望理由も1位は「現地マーケットの今後の成長性」(回答比率83.4 % )。2位に「現地マーケットの現状規模」(同38.7 % )が入る。3位の「安価な労働力」(同35.0%)は前回から6.4ポイント上昇しており、海外投資先としての魅力がバランス良く表れる結果となった。

課題では1位が「労働コストの上昇」(同40.9 % )でありながらも、これは前回から3.2ポイント減少している。2位は「法制の運用が不透明」(同40.3 % )。3位は「インフラが未整備」(同35.1 % )で前回から2.7ポイント増加。

インドと同様に、ASEAN各国でもインフラは整備の余地がある。見方を変えると、海外投資の課題となるインフラ整備の領域には、その輸出を通じた日本企業の事業機会が豊富にあるといえる。

中国 企業の慎重姿勢が鮮明に

今回のアンケート結果では、中国は有望理由と課題の両方において、海外投資先としての問題が浮き彫りになっている。

これまでは有望理由の1位であった「現地マーケットの今後の成長性」が2位(回答比率59.9 % )に下落。過去5年を見ると回答比率は2011年度から右肩下がりで、今年度は6割を下回る。

海外投資先としての期待が薄れたことにより「現地マーケットの現状規模」が1位に上昇(同67.9%)。今後の経済成長は期待薄でありながらも、引き続いての需要高が得票率を牽引する格好となった。

課題の1位は「労働コストの上昇」(同73.0 % )で回答比率の高さが目立つ。2位「法制の運用が不透明」(同54.1 % )もランキング上位10か国で最も高い。4位「知的財産権の保護が不十分」(同43.4 % )もリスク要因だ。「治安・社会情勢が不安」「為替規制・送金規制」は5位(同28.9 % )。中国投資への慎重姿勢が如実に表れたアンケート結果といえる。(ZUU online 編集部)