特集『withコロナ時代の経営戦略』では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続く中での、業界の現在と展望、どんな戦略でこの難局を乗り越えていくのかを、各社のトップに聞く。
2002年(平成14年)、佐賀県で有限会社として創業したホームサポート。当初は不動産業を中心としていたが、2013年(平成25年)に分譲建築部門を独立させる形で、現在の株式会社ホームサポートとなった。北陸地方の持ち家率と比べると、長崎県、鹿児島県、佐賀県などの九州地方はまだ持ち家率が高くはない。年収が高くなくともローンなどに苦しまず、もっと多くの人に家を持って欲しい。そんな想いからパッケージオーダーハウスを展開する、株式会社ホームサポートのトップに話を聞いた。
(取材・執筆・構成=長田 小猛)
1975年福岡県大川市生まれ。福岡県立八女工業高校卒。
高校を卒業後、東京で4年半ゼネコンに勤務。建築現場の監督などを務めていたが、将来は地元で不動産業を営みたいと福岡に戻った。デベロッパー、住宅営業、不動産営業をしながら、宅地建物取引士、二級建築士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。27歳で独立し、有限会社ホームサポートを設立した。当初の予定通り同社で不動産業を営んでいたが、次第に建築の仕事も増え、住宅建築を専門とする株式会社ホームサポートを設立。今年で創業20周年を迎える。
一生で最も高価な買い物は、選択肢が広い方がよい
――独立以来続けてきた不動産業から、主軸を建築業に移された理由をお聞かせ下さい。
もともと不動産をやりたくて地元に帰りましたから、現在でも不動産業は続けています。ただ、ホームサポートで住宅建築を始める前、高すぎる家を無理して建ててしまい、生活費や子どものために貯めていた教育資金まで使って住宅ローンを払い続ける方々を多く見てきました。もちろんそのような状態では家族旅行なども行けず、もともと家族の幸せのために建てたマイホームが逆に家族を苦しめているのではないかと思ったのです。佐賀県は首都圏ほど土地が高くないので、家と土地はセットなのが当然です。一生のうちで最も高価な買い物となる住宅と土地を、もっと多くの人に苦しまずに持ってもらいたい。そんな想いから新しい「株式会社」ホームサポートを設立したのです。
――貴社では2つの主力商品「Lo-Haus」と「Free-iE」を展開されています。
Lo-Hausは「月々3万円で納得の品質の家が建つ」をコンセプトにした商品です。私たちはパッケージオーダーハウスと言っていますが、1,000万円以下の低価格で買える規格型の一軒家だとお考えいただければよいと思います。品質は従来の家と比較してもまったく遜色ありません。これはモデルハウスで、お客様に実感をしていただくようにしています。
Free-iEはフルオーダー、つまり自由設計で建てられる家です。もちろん家の建築費はLo-Hausより高くなりますが、当社の着工件数はこちらの方が多いのです。家賃5万円のアパートに35年住み続ければ、支払う家賃は2,100万円になります。そして当然ですが35年支払っても、アパートは大家さんのものです。そう考えれば家を持った方がよい、せっかく建てるなら資産価値が落ちにくく、長く住み続けられる家がよいというお客様にご好評をいただいています。
建ててからの暮らしを、家族全員が楽しめる家
――品質を維持しながら低価格で住宅を分譲する「Lo-Haus」はどのような想いで生まれたのでしょうか?
私はゼネコンやデベロッパー、ローコストメーカーと呼ばれる会社に勤務し、現場施工管理や宅地分譲開発、営業など建築や不動産に関わる仕事に携わってきました。そこで経験を重ねるうちに、家の値段があまりにも高すぎることに疑問を感じるようになったのです。
もともと不動産業からスタートしているので、資産にはこだわりがあります。土地・建物の資産価値を考えたときに、高い家を作っても資産としてはあまり評価されません。であれば資産保全の考え方からも品質をある程度担保しながら、ローコストで家を建てる方がおすすめだと考えられます。お客様の選択の幅も拡がりますしね。
Lo-Hausというブランドネームは、健康的かつ持続性のあるライフスタイル「LOHAS」と、ドイツ語の「Haus」、そして低価格「Low Cost」の3つをあわせた造語です。この商品は年収が高くなくとも住宅ローンに苦しまず、建ててからの暮らしを家族全員が楽しめる家を持って欲しいとの考えから作りました。当然ですが、低価格でも大手にも負けない安心・快適な家づくりにこだわっています。ご理解いただきたいのは、Lo-Hausは材料や工賃を抑えて低価格を実現しているわけではない、ということです。
――Lo-Hausではコストを抑えるために、どのような工夫をされているのでしょうか?
金額設定や打ち合わせをシンプルにすることによって無駄を省き、コストを抑えています。例としてはカーディーラーをイメージしていただきたいのですが、車だとオプションの価格と車本体の価格がすごく明確に整理されていますよね?住宅展示場だと最初に聞いた坪単価にさまざまな価格、たとえば外構などの付帯工事費用や、テレビアンテナや照明が含まれていなかったりと、とてもわかりにくいのです。結果、最初に聞いた坪単価とはかけ離れた坪単価となってしまい、このギャップがお客様をがっかりさせる。
Lo-Hausは多くの住宅メーカーさんに比べ、とても価格がシンプルになっています。カーディーラーのように本体価格を明確に、オプションをわかりやすいように工夫しているのです。キッチンの天板を変えたらいくら、瓦を変えたらいくらなどとオプションの価格表を作ってあります。その都度当社の社員が再見積もりをしなくてもお客様が自分で計算できるのです。これがLo-Hausの低コストと人気の秘密ですね。
――コロナ禍は事業にどのような影響を及ぼしましたか?
緊急事態宣言下では、さすがにお客様の動きは止まっていましたね。受注も多少影響は受けています。そこで当社ではすぐに、集客と打ち合わせの方法を変えました。従来の集客は住宅展示場や現場見学会などで行っていましたが、現在はインスタグラムのライブ配信などでモデルハウスの説明会にご参加いただいています。また打ち合わせもオンラインでできるようにIT化を進め、社内の情報共有もクラウドを使うようにして生産性を上げています。またお客様が情報を集めやすいように、Webページも内容を充実させています。
――今後はどのように事業を発展させていきたいとお考えですか?
目標は、佐賀県での着工件数No.1になることです。現在は年間70〜100棟の家を建てていますが、130〜150棟建てればNo.1になれるでしょう。現在でも地場ではトップクラスの着工数です。佐賀県ではハウスメーカーや上場企業の進出が続いているのですが、これに負けないようにしていきたい。
また、人材の採用と育成にも力を入れていきたいと考えています。技術職は高卒社員をどんどん採用し、社内に育成の仕組みを作って人材育成をしていきます。営業職は経験が必要なので、中途採用を中心に進め生産性を上げたいと考えています。一人の営業パーソンが、たくさんのお客様を担当できるようにしていきたい。
私たちは、マイホームは「目的」ではなく「豊かな生活のための手段」だと考えています。家族全員が豊かな生活を感じ幸せになれるマイホームを、多くの人に手に入れて欲しいのです。