「なじみの肉屋さん」を作っておこう!

筆者が手掛ける門崎熟成肉の魅力を最大限に引き出す「塊焼き」。(写真=The 21 online)
筆者が手掛ける門崎熟成肉の魅力を最大限に引き出す「塊焼き」。(写真=The 21 online)

ところで、これら希少部位は、焼肉屋さんで高いお金を払わなければ食べられないというわけではありません。対面販売している昔ながらのお肉屋さんに行けば買うことができ、家庭でも味わえます。そうしたお店の職人に好きな部位や食べ方の好みを伝えれば、喜んで希望の部位をとっておいたり勧めてくれたりするはずです。

かつてお肉は、お客様の好みで職人が「あつらえて」くれる物でした。スーパーでのパック詰めが全盛となったいまでは、そんな希望を聞いてくれる職人は少なくなりましたが、ぜひ馴染みの肉屋を作って家庭でもお肉を楽しんでいただきたいと思います。

肉で地域を元気にしたい!

近著『和牛の真髄を食らい尽くす』では、こうしたお肉に関する誤解を解くとともに、熟成肉の真実や各部位による味の違い、料理との合わせ方など、黒毛和牛を本当に楽しむための方法をご紹介しています。

私がこうした本を書いたり、各地でお肉の魅力を語ったりするのは、「お肉を通して日本の地域や生産者を元気にしたい」という「思い」があるからです。

私は岩手県一関で「馬喰郎」(牛の選別・流通を手掛ける仕事)をしていた父のもとで生まれ、牛とともに育ちました。いまは故郷で育つ「いわて南牛」を中心に扱っていますが、このビジネスを通して故郷を元気にしたい。牛に限らず米農家や野菜農家も元気になって欲しい。そう願って私の店では、米も野菜も調味料も、可能な限り一関や岩手産の物を使っています。

また行政と組んで、一関の美味しい食材を楽しむ食事会を開いたり、故郷の生産者と都会の消費者を様々な形で繋げたりする活動も続けています。

お客様にも恵まれ、いまでは一関まで足を運んで生産者たちと交流したり、一関の生産物を都内で紹介してくださったりする方も増えました。「同じお金を使うならば、将来に渡って持続的に生産してほしい生産物を買いたい」という考えをもつお客様の存在が、日本の地方や生産者を勇気づけてくれているのです。

後継者問題やTPP等、生産現場の苦境は続きます。けれど日本の宝である黒毛和牛がこれからも栄え、世界の宝になるように、私は「お肉一筋」の人生を歩みたいと思っています。

「解体ショー」の様子(写真=The 21 online)
「解体ショー」の様子(写真=The 21 online)

千葉祐士(ちば・ますお)門崎熟成肉・格之進オーナー
1971年、岩手県一関市生まれ。27歳で脱サラし1999年故郷で焼き肉店「格之進」を開業。実家の牧場の牛を一頭買いし、熟成肉とコース料理を切り札に人気店となる。2002年から黒毛和牛の熟成に向き合い「門崎熟成肉」というブランドを立ち上げ、加工?流通までを一貫して担う。現在は六本木2店舗、代々木八幡、桜台、一関に7店舗展開している。

(『 The 21 online 』2016年02月22日 公開)

【関連記事】
なぜ、モスバーガーは愛され続けるのか?
手軽でおいしい!「缶詰グルメ」を味わおう
疲れない身体を作る食習慣 4つのポイント
【PR】「成功する人」は、なぜ「偶然」を大事にするのか?
40代でターニングポイントを迎えた名経営者たち