英国,ポケモンGO,英国EU離脱,Brexit,スマホゲーム
(写真=筆者提供)

衝撃のEU離脱国民投票から1カ月が過ぎ、先行きへの不透明感は残るものの、平常さを取り戻したかのように見える英国。国民の関心は、早くも新たな対象へと移行しつつある。その新たな対象とは、やっぱり「ポケモンGO」だ。

EU離脱後に待ち受ける激動の運命を考えれば、あまりにも呑気すぎる気がする。しかし緊迫の糸でがんじがらめの今だからこそ、ポケモンがある種の現実逃避的役割を果たしているのかもしれない。

英国在住のライターによるレポート。

ヘッドラインはBrexitからピカチュウに

つい先日まではEU離脱関連の記事で埋め尽くされていたメディアが、徐々にポケモンGOに侵食され始めている。筆者がそれに気付いたのは、ポケモンGOがUK上陸を果たした7月中旬のこと。

前日までは厳めしい政治家の面々が一面を飾っていたメディアが、一夜にしてガラリと様変わり。可愛いピカチュウがヘッドラインを独占し、一瞬何が起こったのか分からなくなるほど劇的な変化だった。

そしてトップ記事は「単一市場へのアクセス権」から「ポケモンQ&A」に、世間の話題は「在英EU国籍者はどうなるか」から「ポケモンはどこにいる?」に、「各地で再投票要請デモ」は「リバプールで20人の若者がポケモン捕獲にボート窃盗」にすりかわった。

世界を揺るがすのはBrexitではなく、ポケモンだったのだ。

先行き不安な英国のオジさんたちを癒すポケGO

筆者がもっとも驚いたのは、ポケモンGOが英国のオジさん層にも支持されている点だ。所帯持ちのお父さんが、職場でコソッとポケモンを捕まえている。カフェに入れば、一人ランチがてら格闘中というネクタイ姿のオジさんも見かける。

魅力にどっぷりはまったオジさん心理を追及すべく、周囲のオジさんプレーヤーたちに取材してみた。年齢層は31歳から54歳まで。いずれも住宅ローンが肩にのしかかる所帯持ちだ。

全員共通したのは「ほかのゲームとは違う、何か特別な気持ちにしてくれる」という点だ。仕事に、家族サービスにと多忙なオジさんにとって、「簡単にプレイできて、かつ深い達成感がある」点も重要らしい。

EU離脱問題で大変な時期に、ポケモンを追いかけることへの罪悪感はないのかという問いには、「そうゆう時期だからこそ、ファンタジーな世界が必要なんだ」と口を尖らせる。
中でも最もBrexitで打撃を受けた、フリーランスのプログラマーの言葉が印象的だ。「Brexitが決まった途端、仕事の依頼は5分の1以下に激減した。こうなると知ってたら独立しなかったし、無理な住宅ローンも組まなかった」と悔やむ一方で、「でも俺にはポケモンがいるから大丈夫だ」と、冗談とも本気ともつかない様子で呟いた。

いずれにせよ、やはりポケモンGOの存在が、「今後家族をどうやって支えていけばいいのだろう」というプレッシャーに苦しむ英国のオジさんたちの、ほどよい息抜きになっていることは間違いなさそうだ。