財政,ねじれ,生産性
(写真=PIXTA)

現在、目先の財政再建に拘ると、中長期的な財政規律と安定感が失われてしまう。そんなねじれた状態にあるようだ。

求められるのは「ネットの資金需要を復活させる財政拡大」

一つ目は、財政政策と金融政策との関係である。

財政政策は金利上昇と為替高をもたらすために効果がない。デフレは貨幣的現象であり、需給ギャップも金融緩和のみで解消できると、いたずらに金融緩和だけを拡大していった、日銀の行動はクライマックスに来た。

企業の貯蓄行動(デレバレッジ)が顕著である中で、デフレ完全脱却のモメンタムをつけるためには、財政拡大によりネットの資金需要(企業貯蓄率と財政収支の合計で、マネーを膨らませる力であり、アベノミクスのデフレ完全脱却への推進力)を復活させ、それを日銀が間接的にマネタイズすることにより、マネーを循環・拡大させる必要がある。

現在、デフレ完全脱却のモメンタムを強くするために必要なのは、ネットの資金需要を復活させる財政拡大である。ネットの資金需要(アベノミクスの最大でもGDP対比3%程度)対比で、マネタリーベースの増加幅(GDP対比16%程度)は既に圧倒的に大きい。

歳出の膨張を招くと、失われる財政規律

金融政策に過度に依存した結果として行き着いた、マイナス金利政策への評判は、金融機関だけではなく、国民の間でも芳しくないく、「金利」の手段も使えなかった。言い換えれば、財政拡大と金融緩和の適度なポリシーミックスで、デフレ完全脱却を目指していれば、これほど金融市場に負荷をかけないでもよかったはずだった。

目先の財政再建に拘るあまり、これまでのような緊縮財政が継続してしてしまえば、ネットの資金需要が復活せず、円高とデフレ完全脱却へのモメンタムが弱い状況が続き、日銀に更なる負荷がかかる恐れがある。そうなってしまうと、マーケットで日銀の直接的な財政ファイナンス(ヘリコプターマネー)への期待が、膨張するリスクとなるだろう。

政府支出が日銀のファイナンスでまかなわれれば、税という概念自体が希薄となり、予算は、歳出と歳入の編成ではなく、単純な必要経費の会計的な処理になってしまうだろう。歯止めが利かない歳出の膨張につながり、財政規律は失われてしまう。