贈与税,住宅,相続税
(写真=PIXTA)

贈与税とは、財産を個人(あるいは法人)間で贈与した際に生じる税金のことである。通常生活している中では発生しにくいものであるため、馴染み深いとは言い難いだろう。今回はそんな贈与税について、特に住宅に関わる部分に絞って解説する。

贈与税と住宅の関係

贈与税について理解する上で、贈与とはなにかを把握しなければいけない。贈与とは財産を贈る行為、すなわち財産の所有権を移転する行為のことだが、ここで重要なのは「財産」がなにを指しているかということである。財産が移転する行為自体は日常茶飯事に行われているが、それらのやり取りすべてに贈与税が発生するわけではない。贈与税が発生するケースとしないケースの違いは、経済的価値の有無だ。

贈与される財産が住宅であった場合、住宅は当然「経済的価値の有る」財産であるため、相応の贈与税がかかることになる。贈与税には110万円の基礎控除が認められているが、住宅の贈与となると控除内で収まることは基本的にないだろう。基礎控除を超えた財産分に関しては金額が高くなるに従って高率となる超過累進税率に則って税率が課せられ、これは贈与税速算表によって確認することができる。

贈与税の計算方法

以下は、「成人した子」が「親(直系尊属)」から贈与を受けた場合に用いられる贈与税速算表である。それ以外の贈与に関しては別の速算表が用いられるが、形式は同様だ。

(贈与を受けた財産の価額-110万円) 税率 控除額
0~200万円以下 10%
200万円超400万円以下 15% 10万円
400万円超600万円以下 20% 30万円
600万円超1,000万円以下 30% 90万円
1,000万円超1,500万円以下 40% 190万円
1,500万円超3,000万円以下 45% 265万円
3,000万円超4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

・贈与税額=基礎控除後の課税価格×適用税率-控除額

上記の式にそれぞれ数字を当てはめることで贈与税を求めることができる。これを暦年課税制度と呼び、条件を満たした贈与に関しては相続時精算課税制度を利用することも可能だ。こちらは特別控除2,500万円の枠が付加されるため多くの場合節税になることが予想されるが、相続時には贈与財産も相続財産として計算されるので留意しておくべきだろう。

住宅購入の資金援助にかかる贈与税 とは

住宅そのものの贈与ではなく、新たに住宅を購入する際に生じる贈与税というものが存在する。これは住宅購入そのものにかかる税金ではなく、仮に子が住宅を購入しようとしたとき、親が資金援助することによって発生するものだ。資金援助とは現金のやり取りであるため贈与税の課税は妥当なのだが、金額やタイミング次第ではこれを避けることが可能である。

直系尊属(両親や祖父母)からの資金援助に限り一定の金額まで控除を受けることができ、贈与税が非課税となる。制度適用には贈与税の申告が不可欠なため、絶対に忘れてはいけない。

非課税になる特例を受けるには

住宅購入の資金援助に関する非課税制度を「直系尊属からの住宅取得等資金の贈与の非課税制度」と呼び、条件を満たした住宅購入に際して申請することで適用される。申請の方法は、贈与の受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に特例の適用を受けることを記載した申告書を提出すれば良い。

これは先に紹介した相続時精算課税制度と併せて利用することも可能で、ケースバイケースで選択すると住宅購入資金の大部分を非課税枠で賄うことができるだろう。対象となる住宅の条件には「登記面積が50平方メートル以上240平方メートル以下」などがあり、そのほかにも省エネ、耐震、バリアフリー構造などによって非課税枠が変動する。

特例を利用する際の注意点

「直系尊属からの住宅取得等資金の贈与の非課税制度」を始め、贈与税に限らず税金に関わる制度は改正されることも多く、適用範囲をその都度確認する必要がある。例として、上記制度における平成27年以降の適用枠を挙げてみよう。

平成27年1月~12月:1,000万円

平成28年1月~9月 :700万円

平成28年10月~平成29年9月:2,500万円

平成29年10月~平成30年9月:1,000万円

平成30年10月~平成31年6月:700万円

最も適用枠が拡大されるのは平成28年10月~平成29年9月だが、これは消費税率が10%に上昇するためである。消費税率増税に伴い住宅の購入価格そのものが上昇すること、それにより需要が減少することへの対策などが理由だ。実際、消費税のかからない住宅(中古住宅など)の非課税枠はこれとは全く異なる。

ここで大切なのは一概にどの時期に購入すれば得という話ではなく、自分がどういった制度を利用したいかである。

特例や制度の利用は素人には難しい

税金に関わる諸問題について多くの人が税理士などの専門家を頼るのは、ひとえに変動が激しいからである。年度や日付が変われば税率や非課税枠は大きく変わることになるため、最大限活用することを望むならば、専門家に依頼するべきだろう。特例の利用には申告書を提出すれば良いと記したが、実際には付随する書類一式を添付する必要もあるためそういった手続きの手間も考えるとなおさらだ。

もちろん、それら含めて自分で行うことはけして不可能ではない。国税庁ホームページに書式やガイドラインはすべて用意されているので、一度ご覧になってみてはいかがだろうか。