生きている間に財産を子供や孫へ贈与することによって、相続税の負担を減らすことができる。しかし、きちんとした手続きをしないと、結果的に贈与税がかかる場合があるので注意が必要だ。どんな場合に贈与税がかるのか、いつまでに申告しなくてはならないのか贈与税のポイントを紹介する。

目次

  1. 贈与税の申告が必要な場合
  2. 贈与税の申告に必要な書類
  3. 贈与税の申告方法と申告書の書き方
  4. 贈与税の申告期限と、過ぎてしまった場合の対処
  5. 申告手続き上の注意点

贈与税の申告が必要な場合

贈与税の申告が必要な場合は大きく分けて二つある。

一つは「暦年贈与」と言って、1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与の金額が110万円を超えたときである。二人以上の方から贈与を受けた場合、または同じ人から2回以上にわたり贈与を受けた場合は、その合計額が110万円を超えていると申告が必要になる。

もう一つは、「相続時精算課税制度」を選択したときである。60歳以上の父母や祖父母などから財産の贈与を受けた20歳以上の推定相続人はこの「相続時精算課税制度」を選択することによって特別控除額の2500万円までは非課税となる。しかし、超えた部分には20%の税金がかかる。そして、一度この「相続時精算課税制度」を選択してしまうと、「暦年課税」には戻すことができないので注意が必要だ。

贈与を受けた方の相続のときには、「相続時精算課税制度」により受けた贈与の合計額を相続財産に含めて相続税を計算する。2500万円を超えて支払った贈与税がある場合は、相続税の金額によって還付されることがある。

贈与税の申告に必要な書類

贈与税の申告はどちらの課税制度で申告するかによって提出書類が異なる。「暦年課税制度」で申告する人の場合は、贈与税の申告書「第一表」を提出する。

「相続時精算課税制度」の申告をする場合は、その適用を受ける最初の申告のときに、「相続時精算課税選択届出書」の提出が必要となる。さらに先ほどの「第一表」の他に、「第二表」と相続時精算課税の計算明細書、受贈者と贈与者の戸籍謄本または妙本、戸籍附票のコピー、贈与者の住民票のコピー、贈与者の附票のコピーなども合わせて提出しなければならない。

詳しくは国税庁のWEBサイトを参照してほしい。また、申告書は国税庁のWEBサイトでダウンロードすることができる。

贈与税の申告方法と申告書の書き方

贈与税の申告書は、贈与を受けた翌年の2月1日から同年の3月15日までに提出しなければならない。居住地の管轄税務署の窓口に持参するか、郵便または信書便にて送る方法もある。その場合は通信日付印が提出日となる。事前の利用申請が必要だが、これはe-Taxでも申告することができる。

第一表には、自分の住所の管轄の税務署名を記入し、住所、氏名、生年月日と贈与者との続柄を記入する。次に、贈与者の住所、氏名、年齢、自分との続柄と取得した年月日、財産の価格、明細を記入する。

第二表は、贈与を受けた人の氏名、相続時精算課税の選択、贈与した人の住所、氏名、生年月日、続柄を記入する。次に、贈与を受けた財産について種類、細目などの明細、財産を取得した年月日と価格、過去に申告した特別控除の合計額と、残額、翌年以降に繰り越される特別控除の金額を記入する。

こちらも、詳しい記入の方法は国税庁のWEBサイトを確認してほしい。

贈与税の申告期限と、過ぎてしまった場合の対処

贈与税の申告期限は贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までである。この期間に贈与税の申告や完納しなかった場合は罰則がある。

期間内に申告しなかった場合には、税務調査が入るが、その前に期限後申告をすれば5%の加算税が、税務調査の後に期限後申告をした場合は納税額により、15%から20%の加算税がかかる。また、納税額を隠蔽したしりしてしまうとより高額な重加算税が課せられる場合があるのだ。

加えて、期限までに完納できなかった場合は、支払いが終わるまでの期間によって延滞税がかかる。納付期限の翌日から2ヶ月以内に納付すると、税率が7.3%になるので、延滞税を抑えることができる。2か月を過ぎると税率は14.6%となってしまう。

また、不法行為によって納税を逃れた場合は脱税の罪に問われる場合がある。

期限までに申告書を提出しなかった場合にも懲役罰金に処されることがあるので、もし期日までに申告、完納できなかったときは、できるだけ早く手続きをすることだ。

申告手続き上の注意点

暦年贈与を相続対策として検討している場合は注意が必要だ。

やり方を間違えると相続対策が無意味になってしまうかもしれない。そうならないためには、「いつ」「誰から誰に」「いくら」贈与したかということを、誰が見てもわかるように客観的な契約書を残しておくことが必要だ。

具体的には、契約書を記入した日付と、贈与者と受贈者の両者の住所氏名のそれぞれの自署と、実印で押印するようにする。その上で、記録が残るような資金の移動を行う。毎年決まった日にちに同じ金額を贈与すると「連年贈与」とみなされてしまうことがあるので注意が必要である。

国税庁のホームページにある「平成25年事務年における相続税の調査状況について」の中で、贈与税に係る調査の実績報告を見ると、申告漏れは3000件以上、申告漏れ課税価格は216億円にもなる。

今後、国税庁では、贈与税の適正な課税を実現するために、積極的に資料や情報を集め、財産移転の把握に努め、無申告を中心に税務調査を実施していく予定のようである。ついうっかり申告漏れとならないように、きちんと申告をすることだ。

黒須かおり ファイナンシャルプランナー(AFP)・相続士(日本相続士協会)
女性を中心に、一生涯を見守るFPとしてライフプランのコンサルティングを行う。住宅ローンや教育費から、相続や老後のマネー相談まで、幅広い資金計画のアドバイスを手がけている。現在女性起業家を中心とするコンサルタントとしても活動中。 FP Cafe 登録FP。