自分を知り、相手の本音を知ればうまくいく

齊藤勇,職場,心理テスト
(写真=The 21 online)

相手が何を考えているのか、また自分が周囲からどう思われているのか、そうしたことが気になってしまってモヤモヤすることがあるだろう。相手を知り、自分を知ることができれば、集団の中でうまく行動でき、ストレスが激減するはず。そのための「心理学」についてうかがった。

相手の本音は「視線」でわかる!

日本人は外国人に比べて、「相手に嫌われたくない」という欲求が強い傾向にあります。特に相手が上司や顧客の場合、「自分は好かれていないのでは」「相手はこの商談に乗り気ではないのかもしれない」といった不安や焦りが、対人ストレスを生む大きな要因になります。

そんなとき、話し方や表情などから相手の心理がわかれば、自分の気持ちも落ち着きます。

たとえば、目の動きに注目してみましょう。相手の視線が、自分の額の真ん中と両目の端を結んだ「権力ゾーン」と呼ばれる三角形の部分に集中していたら、相手は「自分の権力を誇示して優位に立ちたい」と考えています。よってこの場合は、丁寧な敬語を使い、相手を立てる会話を心がけると良いでしょう。

反対に、自分の両目の端と口を結んだ「社交ゾーン」に相手の視線が集中していたら、相手は「リラックスして話しながら、お互いを理解したい」と思っています。この場合は、多少フランクな話し方をしても大丈夫なはず。こうして本心を見抜けば、相手をうっかり怒らせることがなくなり、こちらも余計なストレスを抱えずに済みます。

部下のまばたきが多い時は要注意

相手の本音を見抜くポイントは、まだあります。

まばたきの回数にも、相手の心理状態が表れます。まばたきが多い人は、「内心動揺していいて、何とか落ち着こうとしている状態」。報告に来た部下のまばたきが多かったら、何か隠し事をしているかもしれません。

もちろん、表情も重要なポイント。片方の口角だけが不自然に上がるなど、左右非対称の表情は本心を隠しているサイン。交渉中にこんな表情をしていたら、言葉が前向きなものでも、最終的にノーを突きつけられる可能性があります。

相手のしぐさも要チェック。会話中に相手が椅子の背に寄りかかったら、退屈している証拠。鼻の周りを触った場合も、話に興味がないという意味です。

ただし、四六時中「相手の心を見抜いてやろう」と考えていると、その緊張が相手にも伝わります。相手が印象的な素振りをした時に、「この仕草はノーだったな」と思い出せる程度で十分だと考えてください。

人間関係を好転させる「あいづち」の魔法

しぐさや表情から相手の本音を分析することは、対人ストレスを減らすきっかけになりますが、それだけで良い人間関係が作れるわけではありません。本当に大事なのは、相手を知ったうえで積極的にコミュニケーションを取ること。いくら相手の本音を知っても、話しかけようともせず距離を置いたままでは、仲良くなる可能性はゼロのまま。たとえ現時点では相手から好かれていなくても、相手を喜ばせたり、楽しませたりするポジティブなコミュニケーションを心がければ、相手もこちらに良い感情を持つようになります。

そのためのコツは、「褒めること」と「あいづち」。次の「さしすせそ+そ」を会話の中で意識的に使うと効果的です。

「さ:さすが」
「し:知らなかった」
「す:すごい」
「せ:絶対」
「そ:そうですね」
「+そ:それで(それから)?」

ビジネスマンにとって、最終目標は人の心を読むことではなく、相手と親しくなって円滑に仕事をすること。その点をくれぐれも間違わないようにしましょう。

職場で役立つ!「自分」を知るための心理テスト

対人ストレスを減らすには、「周囲から自分はどんな人間に見られているか」を知ることも大事。次の心理テストで自分の本音や本性を自覚したうえで、職場の人間関係構築にうまく役立ててみよう。

※『ずるい心理学』(ぱる出版)と、齊藤勇氏への取材を元に作成

(1)鳥の噂話

動物の言葉がわかる魔法の頭巾を手に入れたあなた。使ってみると、鳥があなたについて噂しているのを聞きました。その内容とは?

A 好ましい人だ
B 頼りになる人だ
C 楽しい人だ
D 優しい人だ

「自分の天敵」がわかる

鳥たちの噂話はあなたが大切にしている価値観を表わすので、それに反することをしている人が苦手な相手、つまり「天敵」である。

A あなたを好きにならない人が苦手
B 頼りがいのない人が苦手
C 和を乱す人が苦手
D 怒りっぽい人が苦手

自分の天敵を自覚したら、思いきって自分から近づいてみましょう。「苦手なタイプ」というのは、単なるコミュニケーション不足(=食わず嫌い)のことも多いので、接点さえ持てば「こういう人だったのか」とわかって苦手意識がなくなる可能性も高まります。

会議で隣の席に座ったり、共同作業を提案すれば、会話の機会も増えます。一緒に飲みに行けば、「職場だと取っつきにくいが、オフだと話しやすいな」と思うかもしれません。Dの場合の怒りっぽい人には、こちらも強い態度に出て、相手の反応を見るのも一つの手。いずれにしても、自分から相手の懐に飛び込むのが関係改善の近道です。

(2)ソファの座り心地

あなたは予約していたホテルのロビーにやってきました。そこに用意されていた、見たこともない形のソファに座った感想は?

A 固くて居心地が悪い
B ふかふかして気持ちいい
C 今までにない座り心地だ
D とても上質な肌触り

あなたが属する「コミュニティでの立場」がわかる

椅子やソファなど座るためのものは、その人の立場や地位を表わします。座り心地は、あなた自身が他人に与えている印象です。

A 厳格な監督者
B つかみどころのない癒し系
C 意外性のある知恵者
D 優れた指導者

Aは自分の強さや優位性を誇示したいタイプ。しかし、周囲はすでにあなたを「監督者」として認めているのですから、むしろ穏やかに振る舞ったほうが、職場も良い雰囲気になります。Bは癒し系ですが、上司としては少々頼りなく思われることも。部下の提案に対して、「良い/悪い」「イエス/ノー」をはっきり言うなど、自分の意見を明確にするよう心がけましょう。

CやDは周囲から優秀で切れ者と見られていますが、完璧すぎて近寄りがたいのが弱点。自分の失敗談やプライベートについて語ってみるなど、人間味のあるところを見せると周囲も親しみを感じてくれます。

(3)火山の噴火

あなたは、夢の中で火山が噴火する光景を見ました。そのとき、山はどのように噴火したでしょうか。

A 小さな噴火が何度も起こり、次第に大きくなっていく
B 火口から噴煙が上がるが火は出ない
C 熱い火柱が吹き上がり溶岩が流れ落ちてくる
D なんの前触れもなく山が爆発する

「部下や後輩に対する怒り方」がわかる

夢の中の噴火の様子は、あなたの怒り方(怒りの発散の仕方)を表わしています。

A 徐々に怒りが大きくなる
B 感情が顔に出てしまう
C 八つ当たりする
D 前触れもなく怒り出す

それほど怒っているつもりがなくても、怒り始めると止まらなくなるタイプのAと、周囲を巻き込むCの人は、感情のコントロールが必要です。Bは怒りを隠しきれないタイプで、周囲をおびえさせてしまうことも。Dは周囲から理不尽と思われているかもしれません。CやDの人は、自分の感情を周囲にわかってもらう努力を。

怒りは感情が爆発した結果だと思われがちですが、実はそうではありません。人は無意識のうちに「自分より弱い立場の人に怒りをぶつければ、自分の言い分が通るはずだ」と計算しているのです。もし部下や後輩を怒ってしまったら、「相手が上司だったら、こんな怒り方をするだろうか」と考えてみてください。すると少しは冷静になれるし、理不尽な怒り方はしなくなるはずです。

齊藤 勇(さいとう・いさむ)立正大学名誉教授
早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。人間関係の心理学の中で、特に対人感情や自己呈示の心理などを研究。企業や学校での対人関係を良好にするスキルについても研究を深め、独自の「あいづち対話法」を開発し、その普及に務めている。日本あいづち協会理事長。日本ビジネス心理学会会長。大阪経済大学客員教授。近著『超・相槌』(文響社)、『ずるい心理学』(ぱる出版)など、著書は200冊以上。(取材・構成:塚田有香)(『 The 21 online 』2017年3月号より)

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