1学期も半ばを過ぎ、中学生は期末試験真っ只中。3年生は部活が引退時期に差しかかり、いよいよ受験体制に入る頃となってきた。先日、筆者の末っ子が通う中学でも、3年生と保護者を対象にした進路説明会が開かれた。子どもたちは、そろそろ志望校を定めて自分の希望が叶うよう学業に励む(はずだ)。一方、親がしておかなくてはならないのがお金の算段である。

入学金も授業料も公立と私立では大きな差トータルで2倍

高校進学費用
(写真=PIXTA)

東京都の場合、公立高校は受験料が2200円、入学金が5650円、年間授業料が11万8800円(月額9900円)かかる(平成29年度)。私立高校の平均は、受験料が2万2417円、入学金が25万26円、年間授業料が44万8862円(月額約3万7405円)かかる(東京都生活文化局「平成29年度都内私立高等学校(全日制)の学費の状況」より)。

また、3年間の授業料以外の学校教育費(学校納付金、修学旅行・遠足・見学費、通学関係費など)が、公立で70万5291円、私立で144万4806円。3年間の学校外活動費(学習塾や習い事の費用など)が、公立で50.4万円、私立で76.9万円(文部科学省「平成26年度『子供の学習費調査』の結果について」より)かかる。

合計すると、公立で約157万円、私立で約383万円かかることになる。公立に行くか私立に行くかで準備しなければならないお金の額は、2倍以上違ってくる。

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私立高校の授業料実質無償化が開始する

2020年4月(令和2年4月度)から、高等学校等就学支援金の上限引き上げなどの制度改正が行われ、年収590万円未満の世帯を対象に私立高校の授業料の実質無償化が開始する。

まず、公立高校の授業料が無償化されたのは、民主党政権時代の2010年4月。公立高校の授業料、年間11万8800円が無償化され、私立高校に通う生徒にも同額が補助されることになった。2014年4月からは収入制限が設けられ、モデル世帯(給与所得のみの夫婦・子ども2人の4人世帯の場合)で年収約910万円未満の世帯は、引き続き年額11万8800円の就学支援金が受けられることになった。

私立高校の授業料が実質無償化になる背景には、2017年1月に東京都の小池百合子知事が私立高校の授業料無償化策を提案し、この予算案が可決されたことである。これによって東京都では、2017年度から国の就学支援金にプラスして年額44万2000円(都内私立高校の平均授業料相当。ただし、在学校の授業料が上限)までの授業料軽減助成金が出ることになった。

そして、2020年4月(令和2年度)から制度改正により、2つの変更が行われる。

1.支給額の上限引き上げ

現在は、年収約910万円未満の世帯に年額一律で11万8800円が支給されていた。年収約910万円以上の世帯は対象外になり、年収が低くなるにつれて支給額が大きくなっていた。

2020年4月から、年収約590万円未満の世帯には、年収の金額に関係なく私立高校の平均授業料水準まで支給額が引き上げられる。年収590万円以上の世帯には変更はない(実際は、課税所得を基準に判定される)。

例えば、平均授業料が45万円とすると、通学予定の私立高校の授業料が45万円未満の場合、授業料が実質無償化になる。平均授業料より高い場合は、超えた差額分だけ支払えばよい。在校生にも支給額は適用されるので、通学している学校より案内があれば、申込みを行えばよいだろう。

2.就学支援金が上乗せされる年収目安の減額

現在、年収目安が910万円未満だったが、2020年4月からは年収目安が590万円未満に減額される。これに関連して、判定基準が現在の地方税の「所得割額」から「課税所得」に変更となる。年収目安が590万以上910万円未満の世帯は、制度改正後も就学支援金に変更はないことに注意したい。

助成金を受けるためには、まず通学予定の私立高校の授業料はいくらなのか、授業料水準までの支給はあるのか、自治体独自の支援はどのような制度があるかを確認しておきたい。

また、住民税非課税世帯とそれに準ずる世帯の学生を対象に高等教育の無償化が、2020年4月より実施される予定である。そのため、大学、短期大学、専門学校などの授業料、入学金の免除措置と給付型奨学金が拡大されるだろう。このような制度を活用して、子供の就学を推し進めていきたい。

都道府県、市町村、個別団体、進学先の高校が実施している各種奨学金

授業料以外の学校教育費や学校外活動費もかかるので、受けられる奨学金がないかどうか調べてみよう。返還の必要がない給付型を優先し、返還の必要がある貸与型の場合は無利子のものから検討するのがおすすめ。

まず、都道府県で実施しているものから。東京都の場合は、育英資金という無利子で貸与型の奨学金がある。世帯の収入基準や連帯保証人を2人付けるなどの条件を満たし、在学する学校が推薦する人が借りられる。私立で月額3万5000円(3年間で126万円)、公立で月額1万8000円(3年間で64万8000円)借りることができ、貸付終了後、おおむね11~13年間で返済する。

市町村で奨学金制度を整備しているところも多い。たとえば東京都府中市では、給付奨学資金と貸付奨学資金がある。給付型は全日制高校で月額1万500円(3年間で37万8000円)、入学準備金として8000円が給付される。貸与型は公立で月額1万1000円(3年間で39万6000円)、私立で月額1万7000円(3年間で61万2000円)が貸与される。それぞれに収入基準があり、学力、人物、健康などの面で推薦基準を満たし、在学中の学校から推薦を受ける必要がある。貸与の場合は連帯保証人1人が必要。

ほかにも、病気・災害・自死などで保護者が死亡、または障害を負っている家庭の子どもへの支援をする「あしなが高校奨学金」や、交通事故で保護者を亡くした子どもを支援する交通遺児育英会など、個別の団体や企業がバックアップする奨学金もある。また、私立高校の場合、学校で独自の特待生制度や奨学金制度を設けているところも。申込み時期などが限定されているので、受給条件や手続きの仕方を調べてみよう。

ここで、奨学金を探す際のポイントを整理しておこう。奨学金は収入基準があるものがほとんどだが、給与収入なのか自営業の場合の所得なのかでも違うし、世帯人数、持ち家か賃貸かなどによっても違ってくる。奨学金によって細かく違うので、収入がわかる書類を手元において、事務局などに問い合わせたほうが早そうだ。

奨学金には給付型と貸与型がある。日本の奨学金の多くは、返済義務のある貸与型。学力の基準があるかどうかをチェック。連帯保証人が必要かどうか。他の奨学金と併用できるかどうか。何より、早めに探し始めて申込時期を逃さないことが大事。

私立高校の入学金は25万~30万円。この部分への貸付制度も!

公立高校へ進む場合、入学金は6000円程度で済むが、私立高校の場合は25万~30万円程度かかるし、ほかにも施設費などがかかる。東京都の「入学支度金貸付制度」や、市町村の「入学時初年度納付資金貸付」など、入学費用を一時的に貸し付ける制度もあるので、あらかじめ調べて申し込んでおくと安心だ。無利子で借りられるものもあるので、申し込んでおいて使わなければそのまま返済に充ててもいい。

合格発表から入学手続きまであまり時間に猶予がないので、お金のことは早めに考えておきたい。

収入制限で奨学金が受けられない場合の選択肢は、教育ローン

奨学金の給付を受ける、もしくは借りる場合には、親の収入制限がある場合がほとんどだ。年収がそこそこあって、進学費用が不足しそうな場合は、奨学金が使えない。そんなときは教育ローンを検討しよう。奨学金に比べたら利息が高くなってしまうが、比較的利息が低めのところを選んで、必要な分だけ利用を。

奨学金は子どもが借りる形になるが、教育ローンは親が借りる借金。どちらもあまり高額になってしまうと、子どもの場合は高校卒業後、大学や専門学校へ進む際に足かせとなるし、親の借金はそのまま老後破綻へとつながってしまいかねないので、注意が必要だ。

生島典子(いくしま・のりこ)フリーライター
投資信託の運用会社、出版社勤務を経て独立し、2004年よりライター・編集者として活動。主な執筆テーマは、マネー、子育て、住まい、働き方など。好きなことは、出産と住宅ローン。3人の子どもを助産院で出産した経験あり。子どもを持つ保護者として、学童クラブの父母会活動、PTA活動に参加。「居場所づくり」がこれからのテーマ。

学費が安い私立高校ランキング(東京都、千葉県、神奈川県、埼玉県)

学費が安い私立ランキング - 高校受験スタディをもとに作成。

1位:茂原北陵高等学校(千葉・私立・共学)

年間学費:332,400円 初年度納入金額合計:575,400円 コース:(普通科)特別進学コース・普通コース、家政科

2位:千葉県安房西高等学校(千葉・私立・共学)

年間学費:334,950円 初年度納入金額合計:516,300円 コース:進学クラス、一般クラス

3位:平塚学園高等学校(神奈川・私立・共学)

年間学費:348,000円 初年度納入金額合計:648,000円 コース:特別進学コース、進学コース、文理コース

4位:不二女子高等学校(千葉・私立・女子)

年間学費:363,600円 初年度納入金額合計:623,600円 コース:普通科

5位:千葉聖心高等学校(千葉・私立・女子)

年間学費:393,600円 初年度納入金額合計:643,600円 コース:普通科

6位:栄北高等学校(埼玉・私立・共学)

年間学費:394,000円 初年度納入金額合計:774,000円 コース:(普通科)特類選抜・特類・Ⅱ類・Ⅰ類

7位:自由ヶ丘学園高等学校(東京・私立・男子)

年間学費:396,000円 初年度納入金額合計:716,000円 コース:特別選抜コース、総合選抜コース、総合進学コース

8位:鵠沼高等学校(神奈川・私立・共学)

年間学費:398,400円 初年度納入金額合計:728,400 円 コース:英語コース、理数コース、文理コース

9位:関東国際高等学校(東京・私立・共学)

年間学費:407,200円 初年度納入金額合計:881,700円 コース:(普通科)文理コース・日本文化コース、(外国語科)英語・中国語・ロシア語・韓国語・タイ語・インドネシア語・ベトナム語コース

10位:武南高等学校(埼玉・私立・共学)

年間学費:412,170円 初年度納入金額合計:805,170円 コース:特進コース、選抜コース、進学コース

【保存版】2019年、知らないと損する「お金のはなし」
相続対策に失敗した「元富裕層」の悲惨な末路