分裂が懸念される8月1日の「フラッグ・デー」を目前に控え、下落に傾いていたビットコインの価格が、7月16日を境に再び上昇し始めた。

ブロックサイズを2倍に拡張するハードフォーク「SegWit2x」の発動を提案する「BIP(Bitcoin Improvement Proposal )91」の支持率が高まり、分裂のリスク回避への期待が強まったためだと推測されている。

21日現在はロックインが確定したため、価格はさらに跳ね上がり、今後高騰するとの見方も強い。

「SegWit2x」が分裂を救う?

元々価格変動の激しさで知られていたビットコインだが、フラッグ・デーが迫るにつれ、6月11日以降は3000ドル(約33万5580円)台から急落。7月17日には2000ドル(約22万3720円)台を下回るまで落ちこんだ(コインデスク調査)。

しかし分裂問題回避の可能性が強まるにつれ回復の兆しを見せ、ロックイン確定直後には2900ドル(約32万4568円)台に上昇。21日現在は2800ドル(約31万3376円)弱で取引されている。

CNBCなど複数のメディアの報道によると、ビットコイン改善案のひとつであるBIP91を支持するマイナー(採掘者)が「SegWit2x」の導入に向けて支持を示し始めたことが、事態を好転される切っ掛けとなったようだ。

分裂を引き起こす可能性を秘めた「UASF」

ビットコインのスケーラビリティ問題を簡単に説明すると、取引量の増加が処理能力の限界に達し、ネットワークに極度の負担がかかる状態を指す。実際、処理の延滞や取引拒否などがすでに多発している。

スケーラビリティ解決策として、これまで二通りの方向性が議論されてきた。情報を変更するソフトフォークと容量を変更するをハードフォークである。

具体案としてはビットコインに取引サイズを圧縮する「Segregated Witness(Segwit)」を実装し、ブロックに書き込めるデータ量を増やす「UASF(ユーザ主導型ソフトフォーク)」、ブロックサイズ自体を拡張する「UAHF(ユーザ主導型ソフトフォーク)」などだ。

UASFは8月1日に実行が予定されているが、強制的に非Segwitブロックを拒絶してSegwitの有効化を試みるため、Segwitを支持していないブロックとの分裂が懸念されている。

大手仮想通貨取引所やマイニング企業も支援するビットコイン法案「BIP91」

そこで分裂によって予想される様々なリスクを回避するために、大手仮想通貨取引所やマイニング企業が合意に達したのが「Segwit2x」、つまりBIP91だ。ハードフォークとソフトフォークの中間点をとった妥協案ともいえるだろう。

具体的には可決基準を通常の95%から80%まで下げビットコインに「Segregated Witness(Segwit)」を実装後、ハードフォークを実行してブロックサイズを現在の1MBから2MBに拡張するというものである。

可決基準を80%に下げるには、336ブロック(56時間)のうち269ブロックから支持を得、「ロックイン期間」に持ち込む必要がある。その後、SegWitを支持しないブロックは無効と見なされる。

「スケーラビリティ問題解決」と安心するには時期尚早

コインデスクの報道によると、BIP91へのシグナリングは21日まで開始されない予定であったにも関わらず、比較的早い時期から多数のマイナーがシグナルを出し始めたという。

7月末までに269ブロックという目標を達成すれば、「UASF」を実施する必要すらなくなる――つまり分裂を起こすリスクが低くなるという点で、マイナーの支持率を集めているわけだ。

現時点では支持率93%を突破(Coin Dance調査)。Segwit2xのアクティベートも確定した。

勿論、これだけで長年論議されて来たスケーラビリティ問題が、即解決されるわけではないだろう。非SegWitブロックの行く末も含め、今後の動きもまだ未知の世界だ。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

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