「仮想通貨の取引総額が年内に1兆ドルを超える」と予想する報告書を、英国の市場調査会社ジュニパー・リサーチが発表した。

2017年上半期の取引総額は3250億ドル。1日平均20億ドル以上の取引が行われているという。2017年8月末の仮想通貨の市場価値は総額1585億ドル(コインテレグラフより )で、そのうち約半分をビットコインが占めている。

しかし直後に中国政府がICO禁止令を発表したことから、ビットコインを含む仮想通貨の価格が急落するなど、市場の混乱が気になるところだ。

11月のハードフォーク実施の影響を懸念

ブロックチェーン関連の専門的な市場調査を提供するジュニパー・リサーチは、最新の報告書の中で 企業の共同出資者やエクゼクティブ、マネージャー、IT専門家など約400人の、ブロックチェーン技術に対する見解を分析。2017~22年にかけてのブロックチェーン技術の開発戦略と、発展のチャンスを特定した。

報告書ではビットコイン価格が急騰していた背景に加え、ライトコインの取引量や価格も好調であったことから、「快進撃が続けば年内には仮想通貨の取引額が1兆ドルを超える」とのポジティブな見解を示した。

主な懸念として挙げられているのは、11月に予定されているハードフォーク実施の影響だ。「SegWit2xは最良のスケーラビリティ解決法ではない」との反対派の意見も多く、ビットコイン市場が大きく揺れる可能性を指摘している。

しかし報告書発表後、中国人民銀行がICO(新規仮想通貨公開)を全面禁止にする規制 を設けたことで、事態は一転することなる。

将来的なICO再会の可能性は?強化に走る中国政府

コインデスクなどの報道 によると、ICOの調査に乗りだしていた人民銀行は、既に完了している取引を含む全ICOの実施を違法行為と見なす意向を明らかにした。

現時点では詳細は発表されていないものの、ICOを通して調達した資金の返金が義務づけられるほか、仮想通貨取引所による法定通貨との交換や市場での通貨としての利用、銀行によるICOサービスの提供なども禁止となる。

衝撃的な発表が仮想通貨市場に激震を走らせたことはいうまでもない。ビットコイン、イーサリアム、ライトコインなど、軒並み10%以上の急下落に見舞われた。

推定100億ドルの総市場価値は75億ドルまで下落(コインマーケット・キャップ調査 )。3月に1560万ドルを調達したQtum 、7月に2500万ドルを調達したOmiseGoの市場価値も各10億ドルから6.4億ドル、7.8億ドルに落ち込んだ(コインデスクより )。

国家インターネット金融安全技術委員会の調査によると、7月の時点で中国には43のICOプラットフォームがあり、ICO実施件数は65件。調達資金総額は3.9億ドルに達していた(ブルームバーグより )。

こうした状況では、ジュニパー・リサーチの予想は楽観的過ぎるという印象を拭えない。しかし一部の市場関係者からは、承認を受けたプラットフォームを通すなどの条件付きで、中国でもICO再開を検討する可能性が議論されるなど、「仮想通貨人気は打ち止め」と結論付けるのは時期尚早だろう。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

( FinTech online編集部

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