米投資ファンドのベインキャピタルが広告3位で東証1部上場のアサツー ディ・ケイ(ADK) <9747> をTOB(株式公開買い付け)によって買収すると発表した。時価20%以上のプレミアム付き買い付け価格は1株3660円で、買い付け総額は約1500億円余りの見込み。

これまで、日本の数々の企業にTOBによる投資を進め、最近では東芝メモリめぐる買い手側との調整に主役として関与して注目されたベインキャピタルとはどんな存在なのだろうか。

2転、3転した東芝メモリ売却で主役務める

TOB,広告業,M&A
(画像=Webサイトより)

ベインキャピタル(本社・米マサチューセッツ州ボストン)は世界的なプライベート・エクイティ・ファンドで、2006年に日本オフィスを開設している。

これまで、すかいらーく、雪国まいたけ、大江戸温泉物語、日本風力開発などにTOBしてきた。同社は例えば2015年に、雪国まいたけ <1378> をTOB買収した。今年7月には、全株式を保有する雪国まいたけの49%の株式をコメ卸最大手の神明に譲渡すると発表。譲渡後も51%の株式を保有し続け筆頭株主の座は維持している。

ベインキャピタルの投資法は、TOBもしくは非上場企業の株式を買収して、年月をかけて育成、再上場や他ファンドへの売却によって利益を上げるもの。不採算部門の切り出し、株式非公開化、次世代継承、共同投資などによって事業価値を向上している。

東芝メモリに関しては、ベインキャピタルを軸とする日米韓の企業コンソーシアムが、株式譲渡に関する最終契約を結んでいる。杉本勇次・ベインキャピタル日本代表と東芝は、「東芝メモリ社の技術・生産体制の強化など、ベインキャピタルの経営資源・ノウハウをすべて投じ、企業価値の向上に取り組む」との考えを表明している。

東芝メモリについて、買収完了後2-3年で新規株式公開(IPO)させる計画だ(ブルームバーグによる)。IPOの正確な時期は東芝メモリの財務状況や市場環境に左右されるため、大幅に変わる可能性がある。ベインはIPOで従業員が利益を得られるよう、ストックオプション制度を導入する計画もあるという。(長瀬雄壱 フリージャーナリスト、元大手通信社記者)