ユニクロを展開するファーストリテイリング <9983> としまむら <8227> の好不調がはっきりし始めた。ユニクロの既存店売上がプラスをキープしているのに対し、しまむらはマイナストレンドから脱却できない。

しまむらの株価が年初来安値を更新する一方で、ファーストリテイリング(以下、ファストリ)の株価は上昇し始めた。アパレルを代表する2社のトレンドが変わり始めたのはなぜだろうか?

しまむら既存店売上高は3ヶ月ぶり前年割れ

しまむらが9月24日に発表した17年9月度の月次売上速報によると、既存店売上は前年同月比4.3%減となり3ヶ月ぶりに前年割れとなった。翌25日のしまむらの株価は、150円(1.1%)安の1万3290円に沈んだ。休日が昨年に比べて1日少なかったこと、台風の影響で9月の敬老の日の3連休の売上が振るわなかったことを理由として挙げている。

アパレル各社は月次の売上動向を開示している会社が多い。とくに重要視されているのが既存店売上だ。新規出店を含まない売上を前年同期比で比較するため、ブランドの実態がわかりやすく、同業比較がし易い。しまむらは月次データを20日締めにしているため、月末締めの他のアパレルよりも開示日が早く、アパレル業界のベンチマークとなることが多い。アパレルの既存店動向は休日の数、天候に左右されることが多く、大きなトレンドはパラレルするため、しまむらの動向が先行指標となるのだ。

ファストリの既存店売上高は6.3%増と好調

しかし、しまむらの今年9月の月次売上はベンチマークにはならなかった。ファストリが10月3日に発表したユニクロの9月の既存店売上は6.3%増と2ヶ月ぶりに前年実績を上回ったのだ。9月は月を通して気温が低く推移し、秋冬商品のキャンペーンが順調に立ち上がったとしている。

「しまむらショック」は月次動向だけにとどまらなかった。10月2日には、18年2月期中間決算(3〜8月)を下方修正した。売上予想を2985億円から2841億円に4.8%減、本業の利益を表す営業利益予想を285億円から239億円に16.2%引き下げた。

中間期の下方修正に伴い18年2月通期の予想も売上6100億円から5930億円に2.8%、営業利益は567億円から512億円に9.7%の下方修正を行った。翌10月3日の株価は160円(1.2%)安の1万3180円となった。その後も株価は軟調が続き10月11日には1万2660円まで売られ、年初来安値を更新している。

ファストリの株価は大幅高

ファストリも9月8日に3万円の年初来安値を付けていたが、9月中旬から上げ始めた。9月既存店売上を発表した10月2日以降、10月6日には3万5380円まで上げ、7月13日以来の高値を付けてきた。

ファストリは8月決算で、17年8月期の決算発表は10月12日に予定されている。アナリストコンセンサスでは会社予想の売上1兆8500億円に対し1兆8577億円と0.4%、営業利益は会社予想1750億円に対し1803億円と3.0%上振れ予想となっている。しまむらが苦戦している一方でファストリは順調のようだ。

「しまむら」と「ユニクロ」の業績に明暗分かれる

しまむらの9月度の既存店売上は、会社も説明しているように台風の影響があった可能性が高い。敬老の日の3連休前後に台風18号が日本に上陸した。ユニクロが翌週末に9月売上を回復する機会があったのに対し、しまむらは9月20日締めだったため台風による客足減が直撃した。

ただ、昨年も台風の影響は大きかった。16年8月は4個、9月は2個の台風が日本に上陸した。北海道のジャガイモ畑に大きな影響があったのは記憶に新しいはずだ。17年8月は1個、9月は1個の台風が上陸した。上陸個数だけでは意味はないだろうが、台風の上陸数は昨年の方が多い。既存店の落ち込みが台風だけの影響だとするならば説得力に欠ける。

2社の既存店を少し長いタームで同期間で比べてみよう。ユニクロの17年8月期下期(3〜8月)の既存店売上は2.4%増だったのに対し、しまむらの18年2月期上期(3〜8月)は1.5%減とマイナスに沈んでいる。

日本のアパレル業界の売上シェアトップはファストリで、業界2位がしまむらだ。分類上は同じアパレルでファストファッションとされているが、商品内容が大きく違っていることはユーザーならよく知っているだろう。

ユニクロは、製造小売業(SPA)として世界第3位の企業。スペインのインディテックス(ZARA)、スウェーデンのH&Mに次ぐ。自社で企画を行い、製造を中国など人件費か安いところに委託し、販売は自社で手掛けるSPAという一貫工程のビジネスモデルで成長した。世界のアパレルのトレンドはSPAが主流になりつつある。

一方のしまむらは、アパレルメーカーから仕入れて販売する形態。しかし、アパレル業界の常識を打破し、返品なし、大量仕入れによる価格破壊を起こすことで成長してきた。しまむらはデフレ時代の象徴だった。デフレの勝ち組と言われ、日本株が停滞している時期も株価は相対的に堅調だった。

今年は郵便料金が23年ぶりの値上げとなった。鳥貴族が28年ぶりに値上げした。クロネコヤマトが27年ぶりに宅急便を値上げした。ビールの10年ぶりの値上げが決まった。日本経済は、デフレの出口に来始めているのかもしれない。しまむらの既存店動向もその象徴なのだろうか?

証券会社の格上げ、日経平均の上昇もファストリの株高をサポート

ファストリの株価がしまむらに対してアウトパフォームし始めたのは、既存店動向だけではないだろう。ファストリは、ドイツ証券が9月11日にホールドからバイに、みずほ証券が9月19日に中立から買いに、10月5日にはUBS証券が中立から買いにそれぞれ格上げした。業績の回復期待が背景で、格上げの影響で株価が上昇していることは間違いない。

また、ファストリが日経平均に採用されており、しまむらが採用されていない影響もありそうだ。ファストリは日経平均採用の値嵩株であり、日経平均の値動きの影響をもっとも受ける株だ。ファストリの時価総額は3兆3700億円と東証1部で第32位(10月6日)。しまむらの4500億円に対してTOPIX指数でのウェイトも高い。日経平均がおよそ21年ぶりの高値を更新している状況の中、ファストリにもインデックス系のパッシブ需要の買いが入っていると考えられる。(ZUU online 編集部)