トランプ大統領は3日から14日までの日程で、ハワイ、日本、韓国、中国、ベトナム、フィリピンの5カ国を訪問した。大統領就任後、真っ先に行ったのはTPPからの離脱であった。その後明らかにされた対外政策は、アメリカ第一主義、反グローバル化などである。

あらゆる政策は、アメリカに利益をもたらすかどうか、アメリカの意向に沿うかどうかを考慮しなければならい。グローバル化はアメリカ人の従業機会を奪い、アメリカ人の利益を害する。だから、あらゆるグローバル化に関する対外政策は再考しなければならない。

孤立主義ともとれる政策であり、“アジア戦略は空白”といった状態が続いていたが今回、アジアを訪問する間にその戦略が明らかになってきた。10日に開かれたAPEC会議において、トランプ大統領は演説を行ったが、その演説において、「“我々の仲間になりたい国、公正、互恵貿易を原則とするインド太平洋国家”と2国間貿易協定を結びたい。ただし、我々の両手を縛ったり、我々の主権を犠牲にしたりするような協定は結ばない」と発言した。

インド太平洋戦略が新しいアメリカのアジア戦略

中国,トランプ大統領
(画像=Debby Wong / Shutterstock.com)

これまでアメリカ政府は“アジア太平洋”戦略と称してきたが、ティラソン国務長官が10月18日にアメリカ国際戦略研究センターでの講演において「自由、開放のインド太平洋」といった概念を発表して以来、“アジア太平洋”ではなく、“インド太平洋”が地域のくくりとなっている。

インド太平洋戦略は、2007年に安倍総理が日米インドオーストラリアの4カ国で安全対話を行おうと提案したその枠組みとほぼ同じである。ティラソン国務長官は前述の講演の中で、“将来、アメリカ、インド、日本、オーストラリアの4カ国を中心とする地区の安全構造(航行の自由、法治、公正で自由な互恵貿易といった開放的な秩序の保たれる地域)とする”といった趣旨を説明している。

これが軍事的な関係も含む新しい中国包囲網になるのかどうかという点が重要なポイントであるが、アメリカ国際戦略研究センターのPatrick M Cronin氏は11月11日、雑誌“THE DIPLOMAT”において、「トランプ大統領のアジア5カ国訪問はアメリカがアジアから退却する戦略の始まりを象徴するものだ」と記している。

Patrick M Cronin氏は以前、トランプ政権によるインド太平洋戦略の核心は、中国に対する経済分野における長期的競争戦略にあると指摘している。「アメリカ政府は、日本、韓国との同盟関係の基礎の上に、それをインドなどの新しい仲間にも拡大することにより、長期的な競争のバランスを取ろうとしている」などと説明している。

トランプ大統領の日本訪問では、ゴルフ外交が注目された一方、首脳会談では北朝鮮への対応が中心で、経済貿易に関しては10月に行われた日米経済対話第2回会合の内容を確認するといった程度であった。トランプ大統領は、日米同盟が強固であり、日米は強く団結していると話す一方で、貿易不均衡には不満を示しており、日米貿易は公平、開放といった点で不十分であると批判している。

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