「Finance(金融)」と「Technology(技術)」を組み合わせた「フィンテック(Fintech)」のように、「○○テック」という言葉が増えています。これは、従来の産業や業務にAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、ビッグデータなどを取り入れることで生産性アップにつなげようとするものです。

企業の人事業務においても、例外ではありません。近年では「HRテック」という言葉が生まれており、テクノロジーによって新たなサービスが次々と生まれています。なかでも注目を集めるのが、AIが人間の代わりに選考を行う事例です。ここではHRテックの概要や具体的な活用例について説明します。

「HRテック」の定義と現状

HRテック
(画像=Shutterstock)

HR(Human Resource)テックとは、テクノロジーを導入して企業の人事業務を効率化・刷新することを指します。

HRテックに確固とした定義があるわけではありませんが、以前から存在していた人事管理システムや勤怠管理システム、インターネット上の転職情報サービスも、テクノロジーの利用という意味でHRテックと呼ぶことができるでしょう。

2010年代に入って、従来の人事業務をAIが代替するものも登場し、HRテックは新たな潮流が生まれたといえます。そしてその一つが、AIによる採用・選考の取り組みです。

HRテックと採用・選考の関係

AIは、既存のデータから何らかのパターンを見出し、定式化して新たなデータに対処することが得意です。総務省の「平成28年版情報通信白書」によると、2015年時点でAIには行動予測や環境認識ができるようになっており、画像からの診断やビッグデータを活用した識別・予測の精度が向上しています。

過去のデータの活用という点で、採用・選考はAIの導入に適した分野と考えられます。過去の採用者データをAIに読み込ませ、新年度の採用基準の情報を入力すれば、人力で行っていた採用プロセスを大幅に効率化することも不可能ではないでしょう。

たとえば、大手電機メーカーは2015年に入社試験の書類選考を行うAIを開発し、翌年には人材紹介会社など3社が導入しています。過去に採用した応募者の履歴書から、求める人材の傾向を分析して、その傾向に合う応募者を選考する仕組みです。

こうした動きは、大手企業を中心に広がりを見せています。広告事業を扱う大手企業でも、2016年度から書類選考業務へAI導入を進めており、大手通信会社では2017年からIBMの「IBM Watson」をエントリーシートの評価に活用しています。

企業は採用プロセスの再定義と役割分担の検討を

2018年3月時点では、AIの導入は書類選考まで、という採用・選考プロセスのごく一部にとどまっています。とはいえ、膨大な応募者のデータから限られた人事担当者が時間をかけて選考する必要がなくなれば、大幅な生産性改善が期待されます。

採用・選考におけるHRテック時代の到来によって、企業の採用プロセス自体が大きく変わることは予想に難くありません。将来的に事務処理の割合が業務から減り、戦略的な動きが必要となるでしょう。具体的には、離職者減少のために適切な情報を応募者に伝えること、あるいは面接に時間とリソースを割くことなどがあげられます。

その際、AIとの役割分担を意識することも必要です。あくまで、AIはある基準を読み取って書類選考を行うだけです。基準から漏れた応募者の中にも「採用したい」と思える人はいないかのチェック、どのような基準にするのかを検討するなど、AIにできる業務・できない業務の見極めが必要になるでしょう。

(提供:フィデリティ投信