日米株式市場では昨年12月下旬をボトムとした反発局面が続いている。2月21日の日経平均は取引時間中に一時昨年12月17日以来の2万1500円台を回復し、翌22日のNYダウは終値で2万6031ドルと昨年11月8日以来の2万6000ドル台を回復した。日米株高の原動力はFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ棚上げと米中貿易交渉の進展期待だ。

FRBは1月末のFOMCで追加利上げを見送り、声明文には「政策金利の調整を様子見する」と明記した。また、前回までの声明文に盛り込んでいた「段階的な利上げが正当化される」との文言を完全に削除し、2019年中に2回を見込んでいた追加利上げを棚上げする考えを示した。この結果、FF金利先物価格から計算されるFRBの利上げ確率及び利下げ確率によると、向こう1年間の利上げ確率は3%弱、金利据え置き確率が70%強、利下げ確率が25%強となっている。さらに、FRBが公表した1月末のFOMC議事要旨によると、保有資産を縮小する「量的引き締め」について、ほぼ全ての参加者が「終了時期は2019年中」とみていることが分かった。2017年10月に始まったFRBの保有資産縮小は年内に終了する可能性が高く、大和総研では早ければ次回3月のFOMCで具体的な方針が示される可能性もあるとみている。

3月1日を期限とする米中貿易協議は期限延長の可能性も

日本株,今後
(画像=PIXTA)

米中両政府は2月19日にワシントンで次官級の貿易協議を再開し、21日からは閣僚級協議を始めた。また、ロイター通信は20日、米中両政府が貿易協議の決着に向け、6つの覚書の作成に入ったと報じた。知的財産権保護や為替などに関する中国の経済構造改革の取り組みを明文化しており、トランプ大統領が意欲を示す米中首脳会談での最終合意の原案となる可能性があるという。

一方、ブルームバーグ通信は、構造改革で米中双方が妥結する可能性は低く、両国が3月1日を期限とする貿易協議の延長に向けた調整も進めていると伝えた。今回の貿易協議は何らかの形で合意するか期限を延長するかのどちらかの結果になると予想され、米国が対中関税率の引き上げに踏み切る可能性は低いとみられる。

海外投資家は日本株の先物を年初から7週連続で買い越し

東京証券取引所と大阪取引所が発表した2月第2週(2月12日~15日)の投資部門別株式売買動向によると、海外投資家は日本株の現物を3週連続で売り越したが、先物は年初から7週連続で買い越した。東京証券取引所が発表する裁定買い残株数が目立って増加していないことから、海外投資家による年初来の先物買いは現物との裁定取引に伴うものではなく、昨年末の株安場面における売りヘッジの買い戻しと考えられる。

いずれにしても、海外投資家は昨年1年間で先物を約7兆5000億円売り越したものの、年初からの累計買い越し額は約1兆200億円に過ぎず、今後さらに買い戻す余地は大きいといえる。

日米の企業業績は減速または失速したが…

調査会社リフィニティブによると、米主要500社中、2月22日までに2018年10〜12月期の決算発表を終えた444社の増益率は前年同期比16.3%増と7〜9月期の28.4%から大幅に鈍化したが、法人税減税の効果がなければ1ケタ増益にとどまった可能性もある。また、ポジティブ・サプライズ比率(増益率がアナリスト予想を上回った社数の比率)も69.1%と7〜9月期の77.4%から大幅に低下した。さらに、2019年1〜3月期の増益率は0.8%減と小幅ながら2016年4〜6月期以来11四半期ぶりの減益に転じると予想されている。

一方、日本経済新聞社が上場企業の2018年4〜12月期決算を集計したところ、経常利益は1.9%増と4〜9月期の12.2%増から大幅に減速し、2019年3月期予想は2.0%増と4〜9月期の決算発表終了時点の予想6.2%増から下方修正された。また、大和証券エクイティ調査部の集計によると、「大和200」(金融を除く主要上場企業200社)の2018年10〜12月期の経常利益は15.7%減と2016年7〜9月期以来9四半期ぶりの減益に転じた。

「大和200」については個別企業で一過性の損失が計上された影響も大きいが、欧州や中国の景気減速を背景に日米の企業業績が減速または失速したことは否定できない。ただし、リフィニティブによると2月21日時点でTOPIXベースの予想EPS(1株利益)は12カ月先で7.0%増となっており、日本の企業業績が2020年3月期に減益に転じるというシナリオは現実的とは言えない。日経平均の今期予想PER(株価収益率)は2月22日時点の日経予想で12.31倍、逆算される今期予想EPSは1740円だが、来期が7.0%増益なら予想EPSは約1860円となり、予想PERが13倍まで上昇すれば日経平均は24000円台を回復することが可能というシナリオが、より現実的とみている。いずれにしても、目先の日本株は米国株に比べると出遅れていることもあり、海外投資家による先物買い主導でじり高の展開が続くと想定する。

野間口毅(のまぐち・つよし)
1988年東京大学大学院工学系研究科修了後、大和証券に入社。アナリスト業務を5年間経験した後、株式ストラテジストに転向。大和総研などを経て現在は大和証券投資情報部に所属。日本証券アナリスト協会検定会員。米国CFA協会認定証券アナリスト。