米国では、「EDGAR(エドガー)」と呼ばれるオンライン公開データベースを利用し、投資家や株主が上場企業の財務情報などを自由に閲覧できるシステムが定着している。日本の「EDINET(エディネット)」もEDGARをモデルにした電子開示システム。こうした投資家保護を目的とした、上場企業の事業および財務状況の透明化を図るための取り組みが進んでいる。

EDGARの4つの役割

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(画像=naulicrea / shutterstock.com, ZUU online)

米国証券取引委員会(SEC)が管理・運営するEDGARとは、電子データ収集・分析・検索(Electronic Data Gathering, Analysis and Retrieval) の略称で、証券市場の効率性および透明性、公平性を高め、長期的な経済効果をもたらすというコンセプトのもと導入された。

米国で上場している企業はすべて、EDGARを介して電子的に登録届出書や定期報告書、 その他の書類を提出する義務がある。これらの情報はオンライン上で一般公開されているため、誰でも無料でアクセスおよびダウンロードできる。

EDGARの主な役割は以下の4つだ。

(1)提出が義務づけられている開示書類(年次・四半期報告書など)の受理
(2) 提出済みの開示書類の審査・分析
(3) インデックス(公式届出事項)作成・提供
(4) 投資家への開示書類の公開 ・転送

SEC、企業、投資家にもたらすメリット

EDGARは投資家や企業だけではなく、米国の証券市場そのものに大改革をもたらした。各種報告書から届出まで、大量のペーパー書類の作成・管理・検索は、時間と手間を要する非効率的な作業である。

しかしEDGARでこれらの情報システムが電子化されたことにより、各企業の最新情報を迅速に審査・分析できるため、「市場の流動性と健全性を維持しやすい」という利点をもたらした。

企業はオンライン上で開示書類の提出や情報更新が行えるため、申請・更新業務に費やす時間やコストが大幅に短縮される。開示書類には、年次報告書(Form 10-K)、四半期報告書(Form 10-Q)、直近報告書(Form 8-K)などが含まれる。

投資家や株主は、投資判断に必要な情報をほぼリアルタイムで得られるほか、1994年第3四半期~現在(2019年第3四半期まで)の財務諸表など、広範囲にわたる情報を検索できる。

使い勝手の良さも、EDGARの魅力の一つだ。検索ツール(EDGAR Search Tools)の利用は、企業名やファンド名、ティッカーシンボル、 CIKコード(SECが個人や企業、外国政府に発行する番号)などを入力するだけ。直近の報告書から過去4年間の全データまで、様々な情報が簡単に入手可能だ。インデックス (EDGAR Index Files)を利用する場合は、調べたい期間のファイルをダウンロードする。

構想スタートから約半世紀

EDGARの歴史は、米証券取引委員会(SEC)がデジタル化の構想に着手した、1970年代に遡る。当時、ペーパーベースだった書類の管理システム を、マイクロフィッシュ(写真や図面などを保存するマイクロフィルムの一種)ベースに切り替え、利便性の向上を図った。しかし、この手法は非常に高コストな上、リアルタイムな情報にアクセスできないという弱点があった。