相続が発生した場合、被相続人(亡くなった人)から相続人に財産の名義を変更しなければなりません。

ゆうちょ銀行の口座なども名義変更の対象ですが、解約手続きの方法が一般的な銀行とは異なります。 事前に必要書類を集めても、複数回窓口に出向いて手続きが必要になるため、ご注意ください。

ゆうちょ銀行特有の相続手続きの流れと必要書類について
(画像=税理士が教える相続税の知識)

1.ゆうちょ銀行の相続手続き方法

ゆうちょ銀行は民営化された銀行であり、基本的な手続き方法が他の銀行と違います。 ゆうちょ銀行での相続手続きの流れをご説明します。

1-1.ゆうちょ銀行での相続手続きの流れ

下記の図が、ゆうちょ銀行での相続手続きの流れです。

遺産分割協議⇒書類集め⇒申請⇒口座解約のおおまかな流れは、一般の銀行と同じです。 ただ、ゆうちょ銀行の場合、相続手続きの申し込みをした後でないと、申請書類は入手できません。

ゆうちょ銀行特有の相続手続きの流れと必要書類について
(画像=税理士が教える相続税の知識)

1-2.全国どこのゆうちょ銀行の窓口でも手続き可能

ゆうちょ銀行の相続手続きは、被相続人が作成したゆうちょ銀行(郵便局)以外の窓口でも手続き可能です。

そのため被相続人が地方に住んでいた場合でも、代表相続人の方が手続きしやすいゆうちょ銀行の窓口で申し込みができます。

1-3.ゆうちょ銀行の窓口には最低2回以上行く必要がある

ゆうちょ銀行の相続手続きは、原則窓口のみの対応です。

まず、ゆうちょ銀行の窓口に設置している「相続確認表」に、必要事項を記載し提出する必要があります。

「相続確認表」が受領されるとゆうちょ銀行から「必要書類のご案内」が郵送されてきます。

その中に相続手続きで使用する書類が同封されているので、作成して提出します。

提出後、被相続人の貯金口座を解約し、相続払戻金を受け取るのも窓口で行う必要があります。

したがってゆうちょ銀行の窓口で、通常3回、最低2回は手続きをします。

1-4.相続手続きの申し込みから完了までは1か月程度かかる

「必要書類のご案内」は、「相続確認表」を提出してから1~2週間程度で郵送されます。

また「必要書類のご案内」の書類に必要事項を記入し提出してから、相続払戻金を受け取るまでにも1~2週間程度必要です。

従って、ゆうちょ銀行の相続手続きを始めてから完了するまでには、合計1か月程度かかると考えておくと良いでしょう。

2.ゆうちょ銀行の相続手続きで必要な書類

相続手続きに必要な書類には、相続人が集める書類とゆうちょ銀行が用意する書類の2種類があります。

ゆうちょ銀行が用意する書類は窓口で申し込みしなければ入手できませんので、相続人が集める書類を事前に揃えてください。

2-1.相続手続きで必要となる書類は基本的に他の銀行と同様

相続手続きで必要となる書類は、ゆうちょ銀行が用意する書類以外、基本的に一般の銀行の相続手続きで使用する書類と同じです。

<相続手続きで準備する書類>

  • 遺産分割協議書
  • 実印(相続人全員)
  • 印鑑証明書(相続人全員)
  • 戸籍謄本等(被相続人と相続人の戸籍謄本)
  • 相続確認表(ゆうちょ銀行の書類)
  • 相続請求書(ゆうちょ銀行の書類)
  • 被相続人の通帳・キャッシュカード

2-2.「相続確認表」はゆうちょ銀行窓口で入手可能

「相続確認表」は遺産分割協議書や遺言の有無、相続人の人数などを記載する書類で、全国のゆうちょ銀行の窓口で入手可能です。また、ゆうちょ銀行のホームページからダウンロードすることもできます。

被相続人が保有していた貯金口座の種類も記載するため、被相続人の通帳などで確認してください。 被相続人名義の貯金口座が不明な場合には、ゆうちょ銀行の窓口で用意している「貯金等照会書」を提出することで、口座番号などを確認できます。

相続確認表の書き方は、下図の記載例を参考にして下さい。

ゆうちょ銀行特有の相続手続きの流れと必要書類について
(画像=相続手続きの流れ(ゆうちょ銀行))

2-3.郵送されるゆうちょ銀行の書類により解約申し込みを行う

「相続確認表」をゆうちょ銀行に提出すると、1~2週間後に「必要書類のご案内」が郵送されます。

「必要書類のご案内」は、被相続人がゆうちょ銀行で開設していた口座や金額によって記載する書類が異なる場合があります。

相続手続きの書類提出は、窓口提出のみとなっており郵送はできません。

相続手続きは、代表相続人の代わりに代理人が手続きすることも可能ですが、代理人が手続きする際は、ゆうちょ銀行指定の委任状の作成が必要です。

ゆうちょ銀行特有の相続手続きの流れと必要書類について
(画像=委任状について(ゆうちょ銀行))

3.ゆうちょ銀行の相続手続きの注意点

ゆうちょ銀行で相続手続きをする際は、3つの注意点があります。

ゆうちょ銀行特有の相続手続きの流れと必要書類について
(画像=税理士が教える相続税の知識)

3-1.貯金の払戻方法は現金または口座名義の書換

被相続人の貯金口座を解約した場合、貯金の払戻金の支払いは現金または名義書換の2種類で、相続人の口座に直接貯金口座のお金を送ることはできません。

現金の支払いを希望する場合、代表相続人あてに払戻証書が郵送されますので、代表相続人は払戻証書をゆうちょ銀行窓口に持参して現金化します。

払戻証書はゆうちょ銀行のみで使用できる証書であり、他銀行の窓口で現金化はできませんので注意してください。

口座名義の書換を選択した場合には、名義変更した通帳が郵送されます。

3-2.払戻証書はゆうちょ銀行・郵便局窓口での受け取りのみ

代表相続人に郵送される払戻証書は、ゆうちょ銀行または郵便局の窓口でのみ取扱いができます。

払戻証書の現金化は代表相続人の代理人でも手続き可能ですが、手続きの際は委任状と代理人の身分証が必要となりますので、払戻証書と併せて持参してください。

3-3.貯金額が100万円以下の場合には代表相続人のみで手続きが可能

ゆうちょ銀行の相続手続きで記載する書類は「必要書類のご案内」に同封されますが、被相続人の貯金が100万円以下の場合には記載書類が簡略化される場合があります。

簡略化した相続手続きの場合、必要書類が相続人全員のものではなく、代表相続人のみに省略されます。

<簡略化した相続手続きで準備する書類>

  • 遺産分割協議書
  • 実印(代表相続人)
  • 印鑑証明書(代表相続人)
  • 戸籍謄本等(被相続人と代表相続人の続柄が確認できるもの)
  • 相続請求書(ゆうちょ銀行の書類)
  • 被相続人の通帳・キャッシュカード

なお簡略化した相続手続きの場合には、申請を行った窓口でそのまま被相続人の貯金を受け取れるケースもあります。

4.被相続人が保有するゆうちょ銀行の口座を調べる方法

被相続人のゆうちょ銀行の貯金口座がわからないとすべての相続手続きは完了しませんので、申請前に被相続人の貯金口座の確認が必要です。

どの金融機関でも言えることですが、解約手続きを行う際、相続人が把握していない口座が存在するケースも少なくありませんのできちんと確認することが重要です。

4-1.ゆうちょ銀行窓口で「残高証明書」の発行依頼をする

被相続人が保有するゆうちょ銀行の口座を把握する方法として、「残高証明書」の発行依頼があります。

「残高証明書」を発行してもらうと、被相続人名義の口座および残高照会ができるため、遺産分割協議の前に入手すれば、後々問題になりにくくなります。 残高証明書を依頼する場合には、以下の書類が必要です。

<残高証明書の発行に必要な書類>

  • 被相続人が亡くなったことが確認できる書類(戸籍謄本など)
  • 依頼主が相続人であることが確認できる書類(戸籍謄本など)
  • 依頼主が相続人本人であることが確認できる書類(運転免許証など)
  • 相続人の印鑑

4-2.貯金以外にも振替・国債等の相続財産の有無も確認する

ゆうちょ銀行は、貯金以外にも国債や投資信託を取り扱っています。 国債や投資信託も遺産分割協議の対象となりますので、貯金以外の財産もあらかじめ確認してください。

相続税の対象となる財産も、国債や投資信託を含めた、被相続人が保有するすべての財産です。

確認不足により計上していない金融商品がある場合、税務署から税務調査で申告漏れを指摘され、本税以外に加算税・延滞税を支払う可能性が出てきますので、ご注意ください。

5.相続税は被相続人が亡くなった時点の残高で計算

相続税の計算の対象となるのは、被相続人が亡くなった日時点の貯金残高です。

定期貯金や国債など利息が発生するものについては、亡くなった日時点までに発生している未受領部分の利息を相続税の計算対象に含める必要があります。

ゆうちょ銀行に残高証明書を請求する際に、利息額の記載もお願いすることが可能ですので、相続税の申告をする際には依頼すると確実でしょう。

6.まとめ

ゆうちょ銀行の相続手続きは、窓口で相続が発生したことを申し出て初めて手続き書類を受領できるなど、一部が通常の銀行口座の相続手続きとは異なります。

必然的に窓口に足を運ぶ機会が増え時間もかかりますので、早めに手続きを行う必要があります。

被相続人が持っていた口座や残高の確認は、現存調査や残高証明書の発行を依頼することで行うことができます。

ゆうちょ銀行に限らず、ここで確認漏れがあると遺産分割や相続税申告に誤りが発生してしまうため、預金口座だけではなく国債や投資信託の有無もしっかりと確認しましょう。(提供:税理士が教える相続税の知識