昨日(5月7日)、10兆円規模を目指す政府の大学ファンド(基金)が、今秋までに基本方針を決めて、2021年度内にも運用を始めると報道された。実質的な運用利回りは年3%を目標にする方向で調整するとのことだ。

10兆円規模を目指す大学ファンドが始動 お手本にするハーバード大の運用方法とは?
(画像=Shutterstock/ Jon Bilous)

年率3%リターンを目指す大学ファンド

文部科学省が2021年3月に発表した資料によると、研究力(良質な論文数)の相対的な低下、博士課程学生の減少、若手研究者のポストの不安定、世界トップ大学との資金格差拡大などの課題を克服するため、10兆円規模の大学ファンドの創設し、世界トップクラスの大学研究の実現に向け、財政・制度両面から異次元の強化を図るという。

まずは政府が出資する4.5兆円から運用を開始し、大学改革の制度設計等を踏まえつつ、早期に10兆円規模の運用元本を形成する予定だ。4.5兆円の財源として、2020年度の第3次補正予算から5,000億円、2021年度の財政投融資から4兆円を充てる。

目標の運用利回りは、消費者物価上昇率に3%上乗せする案を検討しているという。総務省が発表している消費者物価上昇率を見ると、ほぼ0%となっているため、実質的に「年率3%」の目標を掲げたと言えよう。

目標とする欧米のトップ校は豊富な資金力を誇る。文部科学省の発表によると、ハーバード大学の大学基金規模は約4.5兆円、一方で日本最大の規模である慶應義塾大学は約730億円と60倍以上の差がついている。

10兆円規模を目指す大学ファンドが始動 お手本にするハーバード大の運用方法とは?
(画像=文部科学省「大学ファンドの創設について 令和3年3月」より引用)

ハーバード大学やイエール大学は卒業生から寄付を中心に運営されている一方、今回の大学ファンドは政府出資という違いはあるが、大学ファンドはハーバード大学基金をひとつのお手本(目標)にしているという。

ハーバード大学基金のポートフォリオ

ハーバード大学の大学基金は、年率10%を超えるリターンを稼ぐこともある「優秀な機関投資家」としての顔を持つ。ここからはハーバード大学基金がどのようなポートフォリオで運用をしているか紹介しよう。