税金のイメージ
(画像=VectorJuice / PIXTA(ピクスタ))

富裕層狙いの課税強化は見送られた

2021年12月10日、自民・公明両党がまとめた2022年度の税制改正大綱が発表された。今回の税制改正大綱をめぐっては、富裕層はもちろん、富裕層を顧客とする税理士たちの間で大きな注目を集めていた。というのも、富裕層を狙い撃ちにした課税強化が図られるとの見方がもっぱらだったからだ。

その最たるものは「金融所得課税の増税」だった。岸田文雄首相は2021年10月の政権発足当初、「成長と分配」路線の実現に向けて、株式の配当や売却による金融所得について、増税を声高に訴えていた。保有資産に占める金融資産の割合が多い富裕層は少なくなく、影響が甚大だとみられていたのだ。

それだけではなかった。1年前の2021年度の税制改正大綱からその方向性が盛り込まれていた「相続税と贈与税の一体化」をめぐっても、富裕層を憂鬱な気分にさせていた。

贈与税の課税方式には「相続時精算課税制度」と「暦年課税制度」があるが、富裕層は暦年課税制度を使って上手に節税してきた。暦年課税における贈与は、贈与する相手1人につき、年間110万円までは非課税で行うことができる。そのため、毎年110万円ずつコツコツ贈与していき、相続税の対象となる財産を減らすというのが常套手段だったのだ。それが一本化されれば、節税することができなくなるというわけだ。

結論からいえば、今回の税制改正大綱ではいずれも見送られた。金融所得課税の増税に関しては、市場関係者の猛反発や株価の急落という事態を受けて、岸田首相はみるみるトーンダウン。結果として課税のあり方について「検討」を表明しただけで、肝心の見直し期限すら大綱に盛り込まれなかった。

相続税と贈与税の一体化に関しても同様に見送られた形だ。富裕層を顧客に持つ税理士は、「皆、一応にホッとしている」と明かす。

意趣返しで財産債務調査制度を見直しか

2つの改正が見送られたことで、安堵している富裕層は多い。ところが、「決して安心してはいられない」と富裕層を顧客とする複数の税理士は警告を鳴らす。というのも税務当局が、まるで金融所得課税において増税できなかった“意趣返し”をするかのように、富裕層への徴税強化に向けた税制の見直し方針を、大綱の至るところに散りばめてきたからだ。

中でも大きいのが、「財産債務調書制度」の見直しだ。これは、億円単位の資産を持つ富裕層を対象に、不動産や株式などの資産の状況を、毎年詳細に税務署に報告させるものだ。その目的は、富裕層における「所得税・相続税の申告の適正性を確保する」こと。つまり、資産の状況について毎年詳しく税務署に報告させることで、所得隠しや相続時の資産隠しといった課税逃れを、容易にはできないようにしているわけだ。

具体的にはこうだ。