「父が亡くなり一人になった母が心配なので同居を考えているけれど仲良く暮らしていけるか心配だ」「一人暮しの母親が高齢になってきたので近くに住みたいけれど、二世帯住宅にするべきだろうか」などというお悩みを抱えている人もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、母一人と同居する二世帯住宅づくりのポイントや建物タイプの選び方などを解説します。お互いに心地よく暮らせる二世帯住宅を実現するために大切なことを学びましょう。

母一人と同居する二世帯住宅づくりのポイント

母一人と同居する二世帯住宅づくりのポイント、建物タイプの選び方
(画像=DoloresHarvey/stock.adobe.com)

母一人と同居する二世帯住宅づくりで始めにやるべきことは、お母様の気持ちを把握することです。この部分が抜けてしまうと、二世帯住宅づくりで失敗しやすくなります。

お母様の気持ちを把握する

娘や息子の立場では「母は一人で寂しいだろう」「子どもと同居したいと思っているに違いない」と考えがちです。しかし、お母様は「子供と同居したくない」と考えているかもしれません。あるいは、同居ではなく子供の近くで暮らせればよいと考えているかもしれません。

内閣府が高齢者を対象として実施した調査では、「子と同居や近居をしたいと考えていますか」の問いに対して「同居したい」と回答した人の割合は34.8%、「同居ではなく近居したい」は29%という結果でした。

  • 同居したい:34.8%
  • 同居ではなく近居したい:29%
  • 同居か近居のどちらかをしたい:9.6%
  • 同居も近居もしたくない:18.9%
    *近居=約6キロメートル以内。車で15分以内程度

引用元:内閣府「平成30年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査結果

同居ではなく近居を希望する人も多いので、二世帯住宅づくりを進める前にお母様の希望を聞くことが大切です。お母様が「同居ではなく近居したい」とお考えの場合は、「部分分離型」や「完全分離型」の二世帯住宅を選ぶとよいかもしれません(詳しくは後述します)。

義理の娘・息子にあたるパートナーに配慮する

二世帯住宅づくりでは、義理の娘(または息子)にあたるパートナーのご希望に配慮することも欠かせません。二世帯住宅での暮らしは、お母様だけでなく義理の娘・息子にもストレスがかかりやすいからです。

二世帯住宅の3つのタイプ・母一人との同居はどれを選ぶべき?

二世帯住宅には以下の3つのタイプがあります。お母様や自分たちの希望に沿って適切なタイプを選ぶことが大切です。

タイプ特徴
完全同居型玄関・リビングダイニング・水回りなどの大半を共有している
部分分離型
(一部共有型)
玄関・リビングダイニング・水回りなどの一部を共有している
完全分離型玄関・リビングダイニング・水回りなどが完全に分離している

工務店向けソフトのプラットフォーム、エニワンの調査によると、二世帯住宅で選ばれたタイプの割合は以下のとおりです。

  • 部分分離型:43.4%
  • 完全同居型:31.3%
  • 完全分離型:25.2%

参考URL:PRTIMES「2年以内に二世帯住宅を建てた1,097人の本音!建ててわかった二世帯住宅のメリット・デメリットとは…!?」

全体の4割以上に選ばれていたのは「部分分離型」ですが、選ばれた割合が最も少ない「完全分離型」も4軒に1軒の割合で選ばれています。

ここからは、母一人と同居する場合の二世帯住宅のメリットとデメリットをタイプ別に解説します。

【完全同居型】の二世帯住宅で母親と暮らす場合

完全同居型の二世帯住宅は、玄関・リビングダイニング・キッチンなどの大半を共有する一方、母親と子世帯それぞれの個室を確保している間取りです。母一人と暮らした場合のメリットとデメリットを確認してみましょう。

メリット

母親に家事や子育てを手伝ってもらえる

完全同居型であれば、お母様が身近にいるため、家事や子育てを手伝ってほしいときに気軽にお願いしやすいでしょう。子育て世帯や共働き世帯にとって、お母様の存在は頼りになるのではないでしょうか。

母親世帯と子世帯の一体感がある

完全同居型では、お母様と子世帯が同じ空間で過ごすことが多いため、家族としての一体感を感じやすいです。一人で生活しているお母様は寂しい思いを抱えている可能性もあります。完全同居型なら一緒に過ごすことも多いので寂しさを紛らわしやすいでしょう。

また、お母様に介助や介護が必要になったときにサポートしやすいこともメリットの一つといえます。

建築費を抑えやすい

他のタイプの二世帯住宅を選ぶと、共有以外の部分を母世帯と子世帯の二世帯分つくる必要があります。完全同居型の場合は一つで済むため建築費を抑えられます。

デメリット

プライバシーを確保しにくい

それぞれの個室があるとはいえ、同じ空間でお母様と子世帯が暮らすので、プライバシーを確保することが難しい場面もあります。世代が違うと生活のリズムも違うので、お互いにストレスを感じやすいかもしれません。

完全同居型の二世帯住宅でプライバシーを確保する方法としては、「防音性を高めた構造にする」「お互いの寝室の位置をなるべく離す」などが考えられます。

キッチンを気兼ねなく使えない

料理が好きな女性にとって、気兼ねなくキッチンを使うことができないことはストレスになりやすいです。

この問題を解決するためには、お母様用のミニキッチンを設置するという方法もあります。ミニキッチンがあれば、お母様が好きなときに自由に料理ができるのでストレスを感じることがないでしょう。

【部分分離(一部共有)型】の二世帯住宅で母親と暮らす場合

部分分離(一部共有)型の二世帯住宅は、玄関・リビングダイニング・キッチンなどの一部を共有する間取りです。部分分離型の二世帯住宅で母親と暮らした場合のメリットとデメリットを確認してみましょう。

メリット

完全同居型よりもプライバシーを確保できる

部分分離型の二世帯住宅なら、ある程度のプライバシーを確保することが可能です。程よい距離感を保ちながら母世帯と子世帯が一緒に暮らせることがメリットといえるでしょう。

間取りの自由度が高い

部分分離型の二世帯住宅は間取りの自由度が高いので、お母様のご要望に応じてさまざまな選択ができます。例えば、以下のようなことが可能です。

  • キッチンを完全に分ける
  • お母様の住居スペースにシャワールームを設置する
  • 玄関は共用にする

デメリット

部分分離型の二世帯住宅には共有スペースがあります。お母様と仲があまり良くない時期などは、共有スペースで顔を合わせることがお互いのストレスになるかもしれません。

【完全分離型】の二世帯住宅で母親と暮らす場合

完全分離型の二世帯住宅は、母世帯と子世帯の住空間を完全に分ける間取りです。完全分離型の二世帯住宅で母親と暮らした場合のメリットとデメリットを確認してみましょう。

メリット

高いレベルでプライバシーを確保できる

完全分離型の二世帯住宅では、完全同居型や部分分離型よりも高いレベルで、母世帯と子世帯のプライバシーを確保することができます。

「縦割り」と「横割り」から選べる

完全分離型の二世帯住宅には、「縦割り」と「横割り」があり、それぞれ以下のような特徴があります。

縦割り・メゾネットの賃貸住宅のように、各世帯が隣り合わせになって暮らす構造
・プライバシーを確保しやすい
・各世帯に階段や玄関ホールが必要なため、広い敷地面積が必要
横割り・各世帯が上下階に分かれて暮らす構造
・親世帯が1階で暮らすと昇り降りの必要がない
・上階の音がストレスになる可能性がある

重視したいことによって「縦割り」と「横割り」のどちらかを選択できます。

デメリット

建築コストが高い

玄関・水回り・リビングダイニングなどを二世帯分つくるため、建築コストが高くなります。土地探しから始める場合は、広めの敷地を購入しなければなりません。その分、さらにコストがかさみます。

お母様が孤独感を感じやすい

お母様が孤独を感じやすいというデメリットもあります。このタイプを選ぶ場合は、「お母様にこまめに声がけする」「週末は一緒に食事をする」などの工夫をしましょう。

まとめ

二世帯住宅は完成してから「こうすればよかった!」と思っても、間取りの変更などが難しいケースがほとんどです。そのため、事前に何度もお母様やご家族とのコミュニケーションを重ねて建物のタイプを決める必要があります。

自分たちだけで判断が難しい場合は、すでに二世帯住宅に住んでいる人の意見などを参考にしながら決めていくことをおすすめします。

お母様と暮らす二世帯住宅の購入を検討している場合、賃貸併用住宅という選択肢も視野に入れてみてはいかがでしょうか。

賃貸併用住宅とは、マイホームと賃貸住宅が併設されている住宅のことです。お母様が賃貸部分の一部屋に住むこともできますし、マイホーム部分を二世帯住宅にすることも可能です。賃貸部分からの家賃収入を住宅ローンの返済に充てられるため、住宅ローンの負担が大幅に軽減されるというメリットもあります。

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(提供:賢いくらし研究所