2014年11月11日の東京外国為替市場では、円ドルレートの高値が2007年10月から約7年ぶりとなる1ドル=116円まで円安が進んだ。2011年10月の安値1ドル=75.55円という歴史的な円高水準と比べてみると、約3年間の間に急激な円安が進行している。

こうした円安事情を背景に、徐々に倒産件数を伸ばしているのが円安に起因する『円安倒産』である。東京商工リサーチが2014年10月8日に発表した調査によると、円安倒産は、2014年1-9月の総件数214件、前年同期比140.4%増と前年同期に比べて2.4倍の急増ぶりとなっている。

さらに、2、3年前に1ドル=80円台で為替予約していた企業が来年以降、続々と“期限切れ"になっていき、円安の影響が直撃してさらなる円安倒産を招く恐れもある。

円安に苦しむ中小企業 対応しきれない理由とは

『円安倒産』の影響が広がり、連鎖的に中小企業の倒産も増加している。

例えば、中国の工場で生産された製品をドル建てで輸入しているメーカーの場合、円安が進行した場合は、原材料が高騰するなどの影響を受けてしまう。事前に為替予約をすることができていた場合は、円安による影響は最小限となる。だが、もし為替予約の期限が切れてしまう場合は、急激なコスト増加に見舞われてしまう。
これまで1ドル=85~90円程度の金額で輸入できていたものが、今年の11月では、1ドル=約115~116円で輸入することになる。原材料価格高騰の影響を、製品価格へ即座に転嫁することは困難である。このような場合、コスト増による収益悪化から、倒産の危機に立たされるというわけである。

円安進行は一部の業界にとって痛手

それでは、特に円安進行の被害を受けている企業とはどの業界の企業だろうか。『円安倒産』を産業別で見ると、運輸業の81件が最多となっており、製造業44件、卸売業41件、サービス業他19件、小売業11件と続いている。

急激な円安は、自動車産業や電機産業といった輸出産業の収益を押し上げる効果がある一方、エネルギーや資源、食料品の調達価格を押し上げて、企業の収益を悪化させる。特に、国内市場をメインターゲットとし、調達コストの影響が直撃しやすい運輸業や卸売業などに対する収益悪化の影響は、より大きなものとなっている。

倒産件数自体は減少 円安被害を受ける企業には個別対応が必要

このように中小企業や一部の業界で円安倒産件数は増加している一方で、倒産件数自体は実は減少している。東京商工リサーチの統計によると、2014年度4月~9月の負債額1000万円以上にのぼる企業倒産は、総件数5049件、負債総額は約9,078億2千万円となった。倒産件数自体は、年度上半期としては6年連続で減少し、近年ではバブル時の1990年度の3,070件に次ぐ低水準である。更に負債総額についても、1兆円を割り込んだのが1990年度以来という低水準となっている。

全体の傾向としては良い方向に向かってはいるものの、その恩恵を受けられない企業に対しては個別の対策が必要であるだろう。円安には一長一短で負の側面があり、短所に関してはそれに対応した対策が必要である。

安倍政権は円安・株高をテコにデフレ脱却を目指してきただけに、大胆な施策を実施することは考えづらい。今後も円安の影響は原材料の高騰を招き、中小企業の収益悪化を悪化させ、確実に体力を消耗させる。

一方で、政府は消費増税後の景気下支えのために公共事業の前倒し執行などを行っている。また、金融機関は中小企業のリスケ要請に応じている。これらの施策は現在の全体的な倒産件数減少に大きく貢献している。

円安が進むなか、このような官民一体となった一部の企業の支援を行うことが、今後のさらなる倒産件数減少に繋がり、さらなる施策も今後必要であるだろう。

(ZUU online)

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