終わりが近づくアラブの時代…OPEC減産見送りに見る石油勢力図の変化

11月27日、OPEC(石油輸出国機構)は総会で、生産枠の減産を見送ることを決定。これを受け原油価格は急落し、4年半ぶりの安値をつけている。同総会では、値下がりが続く原油価格に歯止めをかけるため、減産が実施されるかどうかが最大の焦点になっていた。

OPEC諸国による原油の減産が議論されるのは今回が初めてではない。73年,79年には、それぞれ第四次中東戦争、イラン革命に伴う大幅減産が決定され、その後のオイルショックにつながってきたという歴史がある。しかし、今回のOPEC総会における減産可否は、過去の減産とは異なる意味を持つと考えられる。まず今回の原油価格低下の背景をみていこう。


「シェールガス革命」による原油価格の変化

「20世紀は石油の世紀」、この言葉に代表されるように、20世紀においては石油が代替不可能なエネルギーであった。しかし近年状況は大きく変わりつつある。その原因となっているのが、「シェールガス革命」に端を発する天然ガスの供給量増加である。これまで天然ガスは石油に比べて大気汚染が少なくクリーンなエネルギーとして注目されていたものの、その埋蔵量の半分以上はロシアと中東諸国が占めており、エネルギー市場への供給量も石油に比べて少なかったため、石油需要を脅かすには至らなかった。

しかし、この状況は「シェール革命」により一変した。2012年現在の天然ガス産出量は3.3兆m3と2002年時点での2.5兆m3より30%近く増加しており、世界のエネルギー市場において年々存在感を増しており、原油価格にも大きく影響を与えるまでになっている。(原油産出量は2002-2012年13%の増加)


若年層の就職難が続くアラブ諸国

またOPEC構成国の主体となっている、アラブ諸国の内情も以前とは異なっている。現在、アラブ諸国では、若年人口の増加が続いている一方、就職難のため、不満のやり場をなくした若者たちの入信によるイスラム過激派の勢力拡大、民主化運動による独裁政権の崩壊など、為政者にとって頭の痛い問題が生じている。そのため多くの産油国では石油収入をもとにした国内の安定化、開発・産業育成による雇用創出を急いでいる。そのため現在のアラブ諸国にとっては、シェールガスによる原油シェア低下と収入源による財務状況の悪化は何としても回避したい事態だ。

そのため、中国などの景気減速によりエネルギー需要が落ち込み、ヘッジファンドが原油先物売買で売りを図ったこの時期に、サウジアラビアが中心となって、シェールガスへの「価格戦争」を仕掛けたと推測されている。