ソフトウエアテストなどを手がけるSHIFT<3697>の2024年8月期の売上高が、初めて1000億円を突破する見通しだ。実現すれば100億円台に乗せた2018年8月期から数えてわずか6年での大台越えとなる。

ソフトウエアテスト需要の拡大の波に乗り本業が大きく伸びたのが主な要因だが、それだけではない。同社はここ10年ほど積極的にM&Aを繰り返しており、多くの企業を傘下に収めたことも、少なからず同社の業績を押し上げた。

2028年8月期から2030年8月期をまでの間に、売上高3000億円の達成を目指す中期成長戦略「SHIFT3000」では、本業のソフトウエアテストなどからなる既存事業のオーガニック(自社の経営資源)による成長でおよそ3分の1を、新規事業で3分の1を、そして残りの3分の1をM&Aで稼ぎ出す計画だ。

すでに2023年には10件のM&Aを適時開示しており、すでにアクセルは全開状態にある。2030年までの6年間で2000億円の上積みを目指す同社では、今後も高水準のM&Aが続くことになりそうだ。

売上高が初の1000億円台に

SHIFTは2024年8月期に、1140億円(前年同期比29.5%)から1220億円(同38.6%増)の間の売上高を見込む。

業績予想に幅を持たせたのは、ソフトウエアテストに必要なエンジニアの採用や事業開発投資などで挑戦的な目標を設定しており、その結果によって業績数字が変動するためという。

同社の業績には採用状況が大きく影響するため、計画通りに採用が進まなかった場合には売り上げが下振れする可能性があるというわけだ。

ただ低い数値であっても1000億円を超える見込みのため、6年という短期間での大台越えは達成できそう。

もちろん、この数字には本業に加え、これまでに実施したM&Aによる増収分も含まれており、この効果も見逃すことはできない。

売上高と同様に、利益の予想の方も幅を持たせており、営業利益は116億円(同0.3%増)から146億円(同26.2%増)を見込む。経常利益は3.3%減から21.7%増を、当期利益は16.9%増から60.1%増をそれぞれ予想する。

M&A Online
(画像=2024/8は予想。業績予想に幅があるため、低い数字を採用、「M&A Online」より引用)

2023年には一気に10件のM&Aを実施

SHIFTは、創業者である丹下大社長が2005年に事業を起こしたあと、2008年にソフトウエアテストの重要性と社会貢献度の高さ、さらにビジネスの可能性の大きさを直観し、そこまでの業務改善コンサルティング業から同分野に軸足を移したところから成長が始まった。

2009年に入ってソフトウエアテスト事業を始め、3年後にはインドやシンガポールなどにも進出。次第に業容を拡大していった。

日本のソフトウエア市場は16兆円といわれ、このうちの3分の1をソフトウエアテストが占めると見られている。

同社ではこの市場での占有率をいち早く上げることが、今後の成長のポイントとなると判断し、採用などの戦略投資を積極的に行ってきた。

これと並行して、力を入れているのがM&Aで、同社が公表している沿革によると、2015年のリベロ・プロジェクトを子会社化したのを皮切りにM&Aを活発化。

2016年2件、2018年1件と続いた後、2019年に5件、2020年は6件に拡大。その後も毎年M&Aを続け、2023年は適時開示したM&Aが10件に達した。

2023年最初の案件はソフト開発やITインフラ構築などを手がけるキャリアシステムズ(東京都港区)の子会社化で、旺盛な需要が見込めるIT領域でサービス提供力を強化するのが狙いだった。

このあとバイリンガル人材紹介、システム開発、アプリ・Web開発支援、医療系ソフト開発、ソフトウエア受託開発、保育園運営などの分野の企業や事業を買収。

締めくくりとなる12月には、LINE販促サービスを手がけるクラブネッツ(東京都渋谷区)を子会社化した。同社は顧客囲い込みのノウハウを持っており、子会社化によって「売れるサービス作り」を強化していく方針だ。

M&A Online
(画像=クレイトソリューションズは合併に伴う2カ月の変則決算、「M&A Online」より引用)