『お家騒動』で世間を騒がせている3つの企業の株価に注目が集まっている。お家事情は三社三様だが、大塚家具が3営業日連続でストップ高を記録するなど株式市場も大きく反応している。
雪国まいたけは米投資ファンドのTOBで大注目銘柄に
雪国まいたけ <1378> は、2010年にオーナーの大平氏が外部から実質No2として役員を迎え入れたものの、この役員を2013年に退任させたことから内紛が勃発した。その後、退任させられた元役員が、大平氏の不適切な会計処理を金融庁、東証、取引銀行に内部告発したことから大問題へと発展する。経営支配権合戦が繰り広げられたが、銀行団がホワイトナイトとして米大手投資ファンドのベインキャピタルを招聘し、TOBの行使という事態にまで進展する。
もともとこの大平一族が64%の株を取得しているだけに、TOBを実現する余地はなかったはずだ。しかし、今回メインバンクをはじめとする6行が、株を担保に大平氏に融資した借金の滞納を理由に、担保権を行使し、同社株を取得してベインキャピタルからのTOBに応じるという、きわめて複雑な構造に至っている。この報道を受けて株価は50円以上の上昇を見せたが、TOB価格245円にサヤ寄せする動きとなった。
ベインキャピタルは、すかいらーく <3197> を買収し昨年東証1部に再上場させた手腕があり、直近では東京大江戸温泉物語も買収するなど、V字回復を実現する会社として注目を浴びる存在だ。今回の雪国まいたけのTOBも、投資家の関心はきわめて高くなっている。経営権の争いは骨肉の世界に入り込んでいるものの、投資家は状況を見守っており、TOB後のさらなる株価上昇も期待される状況だ。
大塚家具は実の親子での経営権争い
大塚家具 <8186> は実の親子の経営権争いで話題になっている。現社長の久美子氏の容姿端麗さから家具屋姫などとも呼ばれ、連日メディアで取り上げられている。同社は1990年から会員制を導入し、店員がマンツーマンでショールームを案内し、高級家具のまとめ買いを進める手法の導入で成長を遂げてきた。しかし、デフレの影響をうけて業績は低迷、またその間にイケアやニトリなど新たな低価格ビジネスモデルが台頭したことで、2007年以降は営業利益も減少した。実の父と娘は交互に社長を務めたものの回復には至っておらず、互いが互いを経営陣から外そうとする、雪国まいたけとは違う形の骨肉の争いが展開されている。
現在は株主総会に向けての思惑から、同社の株価は連日ストップ高となっている。今後どのような決着がつくのかは不明だが、双方ともに株式の買い増しを行うことが考えられ、株価上昇を期待する個人投資家からの買い注文が集まっている状況だ。
ビジネスモデル崩壊寸前の小僧寿し
小僧寿し <9973> といえば持ち帰り寿司の老舗ブランドだが、こちらは経営の迷走が続いている。業績は2012年12月期から、既に4期連続で最終赤字が継続しており、過去1年間で社長は2回交代、昨年夏には全従業員の3割が希望退職で会社を去っている。さらに、定款を大幅に変更、金融業や医薬品販売、金券販売を事業に追加したほか、直営店の50店以上を利益率の高いラーメン店に転換することとなり、昨年12月にはその1号店がスタートしている。
一時はファンドとしても有名なイコールパートナーズが、52.8%の株式を取得した時期もあったが、結局は筆頭株主の座から降りている。現状では夢真グループ3社が13年5月の増資分の一部を引き受け、夢真ホールディングス <2362> の傘下に入った。その後、三菱商事で食料部門を経験し、米国での弁護士歴をもつ大西氏が、同年10月から社長に就任したものの、資金集めのためのライツ・オファリングの実施を巡り、同氏による資金流用疑惑がもちあがった。会社と大西氏とで泥仕合が始まり、またしても社長交代と迷走に拍車をかけたのだ。
こちらは確実なホワイトナイトも登場せず、的確な経営者も見つかっていないため、株価は昨年から低空飛行を続けている。
こうしてみると、株価の状況は三社三様で、株価の上昇につながっているケースもあるが、このような商品やサービスを利用する消費者の目線で言えば、一つとして喜ばしい部分はなく、むしろブランドを大きく毀損する行為にもなりかねない。一時的に投資家の関心を得て株価が上昇しても、本質的な部分として企業価値の拡大につながるものなのかどうか、経営者は冷静に判断することが必要だ。 (ZUU online 編集部)
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