既に始まっている生産労働人口の減少



国全体の人口減少はまだもう少し先であると認識する人が多いが、生産年齢人口の減少は既に始まろうとしている。2010年における生産年齢人口(15歳~64歳)は8,000万人以上確保されていたが、2030年には6,700万人へと減少し、およそ2010年の6割以下となってしまうのだ。

もちろんその上の高齢者の人口は増加傾向にあるため、非常に活力のない社会、消費意欲のない社会がいよいよ現実のものになろうとしている。この生産年齢人口が自治体から流出してしまうと、購買力のある世帯が減少することとなり、地域経済の大きな停滞要因となってしまう。


税収減で公共サービスが劣化



特に自治体にとって深刻なのが人口減少による税収減だ。税収が減るということは住民サービスのレベルが下がることになり、その結果を受けてまた住民の流出という負のスパイラスに陥りかねない問題を抱えることになる。特に医療サービスなど多くの公共サービスの採算が合わなくなり、その質と数を減らすことを余儀なくされるため、あらゆるものの利便性が急激に劣化するのが人口流出都市の特徴となってくる。


不動産価格にも影響



さらに深刻なのは、不動産の賃貸や持ち家の売買に対して需給のバランスが取れなくなることから、価格の下落や流通の低下などの問題が起きる可能性もでてくる。特に持ち家の資産価値が下がる問題は、住民の流出に拍車をかけかねない深刻な事態といえる。


自治体の人口減少問題はゼロサムゲーム



日本全体として人口減少が起こっている中では、自治体のいずれかの都市に人口が集まるということは、とりもなおさず他のエリアで著しく人口が減ることを示唆しており、完全なゼロサムゲームとなってしまう。

現在政府は民間企業本社の地方移転などを誘致しようとしているが、特定企業の城下町化は、その企業の栄光盛衰をそのまま引きずる形で町の経済に反映することとなるため、リスクが高い。地域ごとに新たな産業を興すのがもっとも望ましいが、残念ながら地方創生で新たな産業が起きたというケースは極めて少ないのも事実である。

このように、自治体の人口減少は一朝一夕で片付けられない複雑な問題をはらんでいるが、放置しておけばさらに状況が悪化することになる。まず何より住みやすい町をつくることが人の流出を減らし、活力を維持するための基本となることは間違いない。転出超過に陥っている自治体はその問題を真剣に受け止めることが必要だ。

また、出生数を増やしていくことが何より確実な対策となる。子供を育てやすい町にしていくことも肝要だ。米国は人口減少を移民で補っているが、これまで長く多様な人種の社会を形成してこなかった日本にこのやり方が適合するには、かなりの課題を解決する必要がある。転出超過自治体の前途は多難だ。(ZUU online 編集部)

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