ビル管理会社を承継したための苦労も

ほかにも、子供への事業承継で苦労する例がある。関東にある 30億円規模の ビルの管理会社B社のことだ。一代でこの規模のビル管理会社を作り上げたのは、素晴らしい創業者の経営能力だ。一方、この社長には娘が一人しかおらず、会社にも入社していなかった。こうした創業者の娘が事業をよく知らないにもかかわらず、事業を承継してしまうことは非常に多い。こうした場合には、本人は事業とまったく関係なくても、相続税の支払いなどで非常に苦労されるのだ。

B社でも、社長が亡くなった後、資本承継のパターンを決めていなかったため、問題が起こった。具体的には、役員陣の誰もが負債の個人保証をしなかったせいで、金融機関の、B社への対応が変わってしまった。さらに、経営を担う役員陣が投資の失敗や貸付の未回収で大きな損失を2回の出すことになった。その2回とも事業を承継した娘さんのところに役員が来て、増資を要求して、2度ともその娘さんは応じていた。


一族や会社を不幸にしない承継が必要

その娘さんが相談に来たが、非常につらそうな顔をしていた。私は、役員に入ることを勧めた。大株主であれば、臨時株主総会を開いて、すぐに役員になれる。「役員会で決めることをしっかり見るべきだ」ということだ。ところが、役員陣はそれを聞くと「役員にはならないでくれ」と言い出した。大株主にうるさいことを言われたくないのだろう。が、役員陣に拒否する権利は本来ない。

先代の社長が今の自社の姿を見たら、自分が全権を持っていた時にきちんと、事業承継の方法を決めてあげるべきだったと思うはだろう。

経営を知らない子供が株式を承継した時には、立場も弱くなってしまう。それは、経営を回してくれる社長には従わざるを得ないからだ。株式を承継するのが、女性であればなおさらである。次の世代に任せてしまうのは簡単な選択肢ではあるが、一族や会社に非常に大きな不幸を与えてしまうことになりかねないことをお伝えしておきたい。(ZUU online 編集部)

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