日本銀行は不動産市場をどう見ているか

金融機関の融資態度は積極的で、不動産の投資家にとっては資金を得やすい環境にあります。そこで気になるのは、マネーの供給が増えることで不動産市場にバブルが起きていないかということです。

日銀は、金融システムレポートの中で、不動産業の「実物投資の対GDP比率」が過熱方向に変化したと評しています。これは、不動産市況の改善などを背景に、不動産業者による投資が増えていることを反映したものだが、その一方で、もうひとつの不動産関連指標である「不動産業向け貸出の対GDP比率」は落ち着いていると評されています。

日銀の総合的な判断としては、不動産の取引量や価格動向など、その他の幅広い情報も含めて総合的にみれば、「不動産市場に過熱感はみられていない」ことになります。


不動産向けの融資の伸び率はおだやか

銀行の不動産向け融資をストックに着目したのが以下の図になります。不動産向け融資額は伸びているのですが、伸び率は2005年から2007年にかけての過去の不動産ブームとは異なり、おだやかな水準にとどまっています。

景気回復を確かなものにし、日銀が目標としているインフレ率2%を実現するためにも、銀行融資の伸びは望ましいことです。1980年代のバブルは、不動産関連業に大量のマネーが供給されたことで起きましたが、現状では融資の伸び率は抑制されたレベルにあり、不動産バブルを懸念する状況ではないでしょう。

日銀は、不動産市場に過熱感はみられていないとしています。引き続き、物価の安定と金融システムの安定の両面で、バランスを取った金融政策を続けることになるでしょう。 (提供: Leeways online )

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