ダウ工業株30種平均が8月21日、前日比530ドル94セント安と急落したのに続き、米株価は現地時間の24日、大幅続落で始まる公算が大きい。8月24日の上海株価8%続落、日経平均終値の895円15銭安という流れの中、現地時間8月23日のダウ指数先物は345ドルも下げた。

中国の経済減速に端を発する世界同時株式急落を受け、「米連邦政府閉鎖、ユーロ圏危機、米財政危機などにもかかわらず強気に上げ続けてきた米株式市場は、今や買い手を見つけることが難しい状態」(AP通信の分析記事)である。経済ニュースの見出しには、「米株式市場、海外市場の調整の流れに加わる」という文字が躍る。

米株価の下落調整がいずれ起こることは、かなり以前から多くの専門家が指摘してきたことだ。米株価は1年半ごとに調整が起きるのが過去のパターンであったが、今回の局面では4年も調整らしい調整がなかった。問題は、現在の下落が通常の調整局面なのか、底なしの株価下落の始まりなのか、という投資家の疑念だ。事実、VIX恐怖指数は、先週に倍増している。

米投資顧問会社BCGパートナーズのストラテジスト、マイケル・イングラム氏は、「中国経済と米利上げの方向性が明確になるまでは、米株式市場は混乱を続ける」と予測。また、「中国経済と米利上げの見通しが明確になったとしても、米経済成長の見通しは不確かなままであり続けるため、投資家は怖れ、混乱するだろう」との見解を表明している。

別の米投資顧問会社であるクゥインティアム・アドバイザーズのジョージ・ハッシュバーガー会長は、「今年いっぱい投資家の悲観的行動が続く」として、市場の弱気が長期化することを予想している。

弱気の根拠は中国経済の減速に加え、原油価格の続落、年内に予想される米利上げ、新興国からの資金流出、ドル高、米企業業績の悪化など、互いに関連しつつ、一気には解決しない長期的要因が多い。

こうしたなか、楽観論も根強い。『ニューヨーク・タイムズ』紙のベテラン経済記者であるニール・アーウィン氏は、「今回の局面は、多くの市場がバブルの兆候を示し始める中、長い間必要とされていた調整であり、惨劇ではない」との立場をとる。


利上げか、QE4か

今後の米株価の下げが大きく、しかも持続するとの予想が強い中、注目されるのが米利上げの時期だ。つい最近までは「米利上げは9月で決まり」の声が多かったが、直近では12月説が支配的になっている。

今回の米株価の急落を予想して言い当てたロイトホルト・ウィーデン・キャピタル・マネジメントの最高投資責任者ダグ・ラムジー氏はブルームバーグ通信に対し、「現在の調整が10%を上回ることになれば、量的緩和第4弾(QE4)をめぐる観測が聞こえ始め、最初の利上げに関する議論は棚上げされる可能性があると考えざるを得ない」と語り、9月16〜17日の米連邦公開市場委員(FOMC)は利上げ発表どころではなくなるとの考えを示した。

2013年夏に米連邦準備制度理事会(FRB)の議長候補だったローレンス・サマーズ元米財務長官は当時「タカ派」と目され、量的緩和第3弾(QE3)続行に反対し、利上げを含む早期の金融引き締めを唱えていた。

当時のイエレンFRB副議長(現FRB議長)の「ハト派」的立場と対照をなしていた。しかし、そのサマーズ氏は8月23日付の論説で、「このような状況でFRBが利上げに踏み切ることは、危険な誤りとなる」として立場を翻し、話題を呼んでいる。

いずれにせよ、米株価の下落が底なし状態になれば、投資家は取り去られようとしていた「量的緩和による株価下支え」という美酒に再び酔える可能性が出てくる。そうした意味において、調整ではなく、底なしの下落の方が市場にとってはありがたいことなのかも知れない。(在米ジャーナリスト岩田太郎)

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