グローバルスタンダードの新CSR戦略

ちなみに、2011年から欧州で取り組んできた新CSR戦略の代表的なものを以下に紹介したい。

まず、CSRに関する情報(非財務情報)の開示について、欧州委員会は2014年4月、会計指令改訂案を公表し、欧州の大企業に対して、環境、社会、人権、腐敗防止や贈賄などを含む非財務情報の開示を義務付けた。これに加え、従業員の人権尊重も求めている。人権尊重は、国連から2011年3月に発行された「ビジネスと人権に関する指導原則」を基本としている。

欧州連合(EU)では、この指導原則に沿った行動を加盟国に求めており、現時点で英国やオランダ、イタリア、デンマーク、スペイン、フィンランド、リトアニア、スウェーデンが、ビジネスと人権に関する国家行動計画を発行している。さらに、英国では他国に先駆けて、「現代奴隷法2015」を2015年3月に可決した。これは、英国に関係する企業に現代にも奴隷のように働かせられている労働者の状況の改善を求め、報告を義務づけるものだ。

本年2015年に欧州では新たなCSR戦略が出されることになっているが、欧州ではこのようにCSRに対する基本的な考え方が議論され、欧州全体としての政策として計画が推進されている。現在の状況は、欧州連合がCSRを政策的に進め、加盟国へCSRの推進を促しながら、世界を牽引している状況と考えて良いだろう。特に多国籍で活動している日本企業は、なにゆえCSRを推進することが必要なのかを理解し、世界の各拠点を含めたグローバル・スタンダードのCSRを実践することが望まれている。

【著者略歴】 下田屋 毅(しもたや たけし) Sustainavision Ltd. 代表取締役。英国在住CSRコンサルタント。日本と欧州のサステナビリティ/CSRの懸け橋となるべくSustainavision Ltd.を2010年英国に設立。ロンドンに拠点を置き、サステナビリティ/CSRに関するコンサルティング、リサーチ、研修を行う。ビジネス・ブレークスルー大学講師(担当:CSR)

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